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素直なキミも手がかかる【逆Ver.】1

「……なんだこれ」  リョウのバッグのそばに転がっている瓶をアヤが見つけた。 『スナオナール』……?  何も読まなくても効果の察しがつく。  もしかしたら、昨夜飲まされたのかもしれない。どうにも昨夜、コーヒーを飲み終えたあたりからの記憶が曖昧だ。今朝のリョウの様子もなんだかおかしい。  やられっぱなしというのも、癪だな。  トイレへ行っている隙に、リョウのペットボトルにその液体を入れた。  トイレから戻ると早速冷蔵庫を開けてペットボトルの水を飲み干した。  さて、効き目の程はいかに……? 「アヤ、しよ」  さっき言っていたのは本気だったようだ。再び跨ってくるリョウの腰に手を回す。 「抱いていい?」 「……うん」  かなりの間を置いた重めの返事。やっぱりまだ上下で揉める。順番に、と決めたものの、いろいろあってきっちり交代制というのも難しい。 「いや?」 「ううん……そのかわり」  アヤの額にリョウのおでこをくっつけてくる。そしておそるおそる、尋ねてきた。 「めっちゃ優しくしてくれる?」 「いいよ」  その答えを聞くと、それまで不安そうだった表情が安堵のそれに変わる。 「な、ちゅーして」  リョウが目を閉じて唇を突き出してくる。なんだかやけに甘えん坊だな。アヤは少し笑ってくちづけた。 「アヤ、好き、大好き」  角度を変えながら重ね合う唇から、時折熱い吐息とともに漏れてくる言葉は、全てアヤへの愛。もっと聞きたいな、と思って、アヤが唇を離し、まじまじとリョウを見つめると、リョウが顔をクシャクシャにした。 「なんでやめてまうん」 「もっと聞きたくなって」 「じゃあアヤも聞かせてよ、俺のこと好き?」 「そんなの決まってるだろ」 「ちゃんと聞かせてよ」  じわじわとリョウの瞳に涙が溜まってきた。キスを途中でやめたのがそんなにダメだったのか?とアヤは不思議がり、同時に少し面倒臭さも感じていた。 「愛してるよ」 「なんなんその『言うときゃええんやろ』て感じの言い方」 「ちゃんと愛してるって。伝わってない?」 「伝わってない……ことはない……けど……」  ついにしょんぼりと俯いてしまった。 「時々聞かせてくれな、不安になるよ。こないだは好きでいてくれても、今日はどうかわからへんもん」  なんて顔をしてるんだ、と胸が痛む。ここ最近見なかった、不安で辛くてたまらない顔だ。普段が底抜けに明るいだけに、たまにこんな顔をされるときついものがある。 「好きじゃなくなることなんかないよ」  髪に指を梳き入れながらもう一度唇を塞ぎ、優しく押し倒せば、リョウの瞳はすっかりとろんとした期待の眼差しに変わった。

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