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空港にて

空港の窓の外には、飛行機がたくさん停ってる。 もう着いてるはずなんだけどな……。 どの飛行機だろう。 そわそわと飛行機を眺めながら、連絡を待っていると、スマホが短く鳴った。 メッセージアプリを開くと、短い英文で『今着いたよ』って書いてあった。 俺も英語で『空港の入口のカフェで待ってるね』と送った。 カフェでミルクティーを飲んでいると、『見つけた』とメッセージが来た。 キョロキョロと辺りを見渡すと、金髪の背の高い男性がスーツケースを引いてやって来た。 いつも電話越しでしか聞けない、彼の英語が聞こえてきた。 『真尋(マヒロ)、久しぶり』 『シン!……会いたかった』 英語の勉強のため、シンとの会話は英語と決めている。 時々、日本語でも話すけど。 そういえば、会ったら絶対ハグしようと思ってたのに、周りが気になって、手を握ることくらいしかできなかった。 シンは俺の恥じらいが分かったのか、彼からハグしてくれた。 『外国人からハグしたら、自然だろ?』 ヘーゼルの瞳が相変わらず綺麗で、ドキドキした。 『今日はコンタクトなんだ』 『眼鏡の方がよかった?』 『どっちも好きだけど……眼鏡姿はみんな知ってるから、コンタクト姿の方が、その……俺しか知らないシンって感じで、好きかな……』 独占欲強すぎるかな。 でも、本当にそう思うんだもん。 『真尋は可愛いな』 俺の髪をくしゃりと撫でた。 大きな手、あったかい。 『あ、シン、お腹空いてない?』 『空いてきた。久しぶりに日本食が食べたいな』 『お寿司とか?』 回転寿司くらいしか、ご馳走してあげられないけど……。 『蕎麦とかがいいな』 『蕎麦屋さんなら、近くにあるし、ご馳走する!』 蕎麦なら多少高くても払えそう。 せっかく日本まで来てくれたんだから楽しんでほしい。 『真尋。食事くらいは奢らせてほしいな。大人を立たせてくれなくちゃ』 『え、でも……』 いつもなんだかんだでシンには奢って貰っているし、申し訳ない。 『それに、今日は真尋が素敵な所に連れて行ってくれるんだろ?』 そう言って、シンは俺の腰に手を回し、引き寄せた。 そうなのだ。いつもはシンが色々準備してくれるけど、今回は俺が準備した。 楽しんでもらいたいな。

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