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馴れ初め
シン=ギルバード教授。34歳。
若くして、イギリスで大学教授を務め、イギリス文学、特にシェイクスピアの研究をしている。
論文もたくさん書いてて、最近は本も出してる。
まだ日本で翻訳はされてないけど、わかりやすくて、俺のお気に入りの本だ。
今回日本に来たのも、外国文学のシンポジウムの講演のため。
一週間休みを取って、早めに日本に来てくれたのだ。
『少しでも真尋と一緒にいたいから』
惚気じゃないけど、シンは俺にメロメロなんだ(惚気だけど)
シンと出会ったのは、去年の八月。ちょうど一年前だ。
短期留学の為、一ヶ月半、俺はイギリスにいた。
大学に行く前日、ルームシェアをしていた人達と飲んでいたら、いつの間にか酔っ払って知らない人の家で寝ていた。
その家が、シンの家だった。
その時は混乱して、家を抜け出したんだけど、大学に行くと更にびっくり、シンは大学教授だった。
シンへの恋を自覚したのは、講義を受けてからだし、告白したのも俺からだけど、彼は出会った時から俺が好きだったんだって。
付き合い始めて、あともう少しで丸一年の記念日。
特別なことをしてあげたくて、避暑地の山にあるコテージを借りた。
……たまたま金持ちの友達のバイトを手伝ったら、「使っていいよ」って言われて、お言葉に甘えさせてもらっただけなんだけど。
蕎麦を食べながら、シンは俺の髪を手で梳いた。
『何?』
『また髪の色変えたの?』
『美容師の友達が、俺を練習台にするんだ』
『ふぅーん』といいながら、俺のパーマのかかった髪を梳く。
前は濃い茶色だったけど、シンと同じようなヘーゼルっぽい茶色にした。
『いい色だ。君によく似合ってる。けど、少し妬けるな』
『何で?』
『私より、君の髪に触ってたってことだろ?私だって真尋の髪を撫でたかった』
普段はクールな感じで、笑うことも少ないのに、プライベートはすごく甘えん坊な所が、可愛い。
一回りも上に人に可愛いなんて、おかしいかもしれないけど。
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