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第1話

ネオンが煌々ときらめく繁華街。 出勤時間のカッコいいお兄さん達や綺麗なお姉さん達に紛れて足を早める。 昼間はサラリーマンに紛れ立ち並ぶオフィスビルの狭間で空さえ見ることも無くあくせく働き、疲れ切った身体を引きづりながら最寄駅を降りれば華やかな場所にたどり着く毎日。 だけど圭一(けいいち)には無縁の場所だ。ネオンの隙間を通り抜けひっそりとした裏道へと回る。そこは表の道とは比べ物にならない野良猫が餌を求めうろつき華やかさのない裏道。セキュリティを解除して階段をゆっくり上がっていくと、外灯が足元を照らしてくれる。 圭一の家族しか知らない暗証番号を押して玄関へと入っていく。 「お帰り、圭一」 顔を覗かせた(なお)が玄関へと駆けてくる。いつもの光景なのに圭一の肩から力が抜けていく。 「ただいま〜、店は?」 「今日はちょっと暇だから、圭一の夕飯作ってたんだ」 嬉しそうに直は左手で圭一のカバンを持ち、リビングへと手を引いた。 「ありがとう。孝司(たかし)はまだなんだろ、持って行ってやって」 『圭一の夕飯も一緒に作った』が本音だろうとネクタイを緩めなから直の顔を見た。 「圭一が食べたら降りる。一緒に食べよ」 チラリと横目でテーブルを見ると圭一の好物がズラリと並べられその料理に唾液が溢れてくる。血が繋がらない圭一の家族。それでも圭一にとってかけがえのない家族。 「今日は忙しくてお昼食べ損ねたんだ。美味そう〜」 感謝の言葉はいつもこうやって笑顔を見せること。直が喜んでくれることはなんだって知っている。上着とネクタイをソファに放り投げダイニングチェアに腰を下ろす。その姿を嬉しそうに見ながら直も目の前に座り手を合わす。 いつも二人は仕事をしている時間だ。こうやって誰かと晩飯を食べるのは久しびりだと少し気分が上がり、さっきまでの仕事の疲れが少し取れた気がしていた。 「圭一も成人したんだし、お店に来たら良いのに」 チラリと直の顔を見て、咀嚼で誤魔化し左右に首を振った。 「俺は孝司や、直みたいにイケメンじゃないし、話も下手だから迷惑になるだけだよ」 フッと吐いた溜息が聞こえたが、聞こえないフリをした。 俺には地味なサラーリマンが似合ってる……下から聞こえるムーディーな音楽は好きだ。だけどそこは自分が踏み込んではいけない場所だと、そう言い聞かせながらそれでも悔しくてやるせない気持ちを仕舞い込んだ。

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