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第14話
*☼*―――――
13年前、俺は名前さえ知らないお兄さんに出会った。
優しくて、あったかかった。
今まで、ずっと1人だった僕に愛をくれたあの人は13年間俺の支えで、俺にとっては神様だった。
そして、今日、高校を卒業した俺は猛烈に悩んでいる。
別れる時、ポケットに入れてくれた紙。
何回も見直し、握りしめてきたそれはボロボロ。
その時の俺にとってはただの数字が書いてある紙だったけれど、今の俺にとっては唯一の繋がれる手段だ。
でも、今さら連絡したところで、番号は変わっているかもしれない。
でも、それよりもっと最悪のパターンは、もうあの人が俺のことなんて覚えていないかもしれないこと。
誰?なんて言われたらこれまであの人のことだけ考えてつくってきた僕の人生は、粉々になってしまう。
人と関わるのが下手で友達さえいない俺には、もう生きる意味がなくなってしまう。
怖い。
でも、頑張らないとだめだ。
今、電話しなかったら、もうしようと思うことさえなくなるかもしれない。
スマホを持つ金もない俺は、公衆電話にチャリンと硬貨を入れた。
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