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君がいるから
ラーララーラーララー──
時刻を告げる音楽が流れ出す。この時期になると、薄暗くなる時間に流れてきて早く帰るように促されている気がしてならない。
俺はこの時間がとても寂しく感じられて嫌いだ。おまけに徐々に気温が下がり、身体も冷えてしまう。あぁ、嫌だ。
上着の前をきゅっと閉めて急ぎ足で家路を歩く。
他の人はこれから長い夜を楽しむのか、軽い足取りで人混みの方に向かっているようだ。
食、運動、読書……。楽しみ方は無限にあるだろう。それでも俺にとっては重いものだ。
人混みを抜け、ようやく見慣れた建物が見えてきた。無意識のうちに身体が軽くなっていく。
そしてその先には、見慣れた君の姿があった。
「ただいま」
「おかえり」
(この作品は第46回Twitter300字ssの企画に参加した作品です)
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