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過去の雨、今の味

『底冷えのするような雨だった──』  たった一行しか思い付かない。俺は頭を捻らせながらその先を考える。  そういえば、君と出会ったときも雨だった。  あれからもうどれくらい経ったのだろうか。  今ではもうすっかり、君がいないと生きていけなくなっている。  そんなことを考えていると、自然と笑いが込み上げてきた。 「どうした。疲れたのか?」  すると、コーヒーを持って君が部屋に入ってきた。 「いいや。ちょっと昔のことを思い出してただけ」 「だったらいいんだが」 「それじゃ、水も滴るいい男の淹れてくれたコーヒーでも飲むとするよ」 「……は?」  君の困った顔を見ながら、最高のコーヒーを味わう。 (この作品は第54回Twitter300字ssの企画に参加した作品です)

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