7 / 21
過去の雨、今の味
『底冷えのするような雨だった──』
たった一行しか思い付かない。俺は頭を捻らせながらその先を考える。
そういえば、君と出会ったときも雨だった。
あれからもうどれくらい経ったのだろうか。
今ではもうすっかり、君がいないと生きていけなくなっている。
そんなことを考えていると、自然と笑いが込み上げてきた。
「どうした。疲れたのか?」
すると、コーヒーを持って君が部屋に入ってきた。
「いいや。ちょっと昔のことを思い出してただけ」
「だったらいいんだが」
「それじゃ、水も滴るいい男の淹れてくれたコーヒーでも飲むとするよ」
「……は?」
君の困った顔を見ながら、最高のコーヒーを味わう。
(この作品は第54回Twitter300字ssの企画に参加した作品です)
ともだちにシェアしよう!