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癒やし癒やされ

「んーっ!」  ようやく作業のノルマに達成した。硬い身体を伸ばし、凝りを少しでも解していく。  作業机の傍らにあるベッドの中では、ぐっすりと君が眠っている。とても気持ちよさそうだ。 「さてと……」  俺も着替えて起こさないように入っていく。  狭めのベッドで男二人。かなり密着する形で寝る格好となる。  それでも俺は、一日の疲れが君に触れると忘れられる気がしているのでこれで十分だ。  腕をそっと君の肩に添わせ、抱き寄せるようにする。 「んっ……」  すると君は、俺に擦り寄るように近付いてきた。起きている気配は見えないから、きっと寝ぼけているのだろう。  俺の鼻先に君の頭が近寄る。短い髪がくすぐるように揺れ、ふわりと君の香りが漂う。  俺と同じシャンプーを使っているはずなのに、どうしても同じ香りにならない。  この香りが愛おしく、決して離したくないもので、俺は君の身体をぎゅっと抱き締めていた。  頭に顔を埋め、再び君を堪能する。  この身体ある疲れを君が全て癒やしてくれている。この感覚が、とても気持ちいい。  いつも君は俺のお世話をして疲れているから気付いていないだろうけど、俺はここまで君のことが好きだ。  だから君のために頑張って稼ごうと思える。君がいるから素晴らしいものを生み出していける。  俺にとって君の存在は何よりも大事なものである。  そうした感謝をなかなか伝えられないものだが、こうして抱き締めていることで伝わってくれてほしい。 「……苦しい」 「あ、起きちゃった?」  睨むように君がこちらを見ている。寝起きのようなそんな感じである。 「こんだけ抱き締められたり匂い嗅がれてたら誰だって起きる」 「あはは、ごめん。だって、同じもの使ってるはずなのにすっごくいい感じなんだもん」 「そんなことはない」  君はもぞもぞと動き出し、俺と顔の位置を並べる。  かと思えば、急に顔を近付けてきて唇をそっと重ねてきた。  君からされるなんて思わなかったよ。俺はじっと見返すことしかできなかった。 「どうした? 匂いだけじゃ不満じゃなかったのか?」 「それは……」 「なら、好きなだけ俺を嗅げばいい」  君にしてはやけに甘ったるい言葉が出ていた。笑みを浮かべる顔ですら愛おしい。  俺は君の胸元に顔を埋め、顔を擦り寄せる。君も俺の香りを楽しんでほしい、そんな想いを抱きながら。  額の辺りに唇の感触がしたかと思うと、今度は頭に別の感触がした。 「俺だって、この匂いが好きだ。いつまでも包まれていたい」  互いに好きでいるこの感覚が、最高の気分だった。  俺は深く顔を埋めながら君を堪能していた。 (この作品は『お題に沿って短編BL小説を書こう企画』参加作品です)

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