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第1話

  心の色を無くす。 そんな言葉をぼそりと呟く少女は──、否、少年はどこからどうみても美少女だった。 紅い瞳、漆黒の長髪はさらさらで櫻貝の唇はもう少女そのモノである。身長は小学生中学年、体重もその平均値を賄っていない細身で、筋肉の薄い小さな人物。そう、クラスの片隅にひとりはいるあの暗い影のような存在であった。 だからだろうか、クラスの連中の同然扱いも影のモノか、ソレ以下の扱いである。つまるところ、いじめられっこだ。 きれいに整えられていた髪はボサボサで、着ている服すらボロボロである。片足の靴下もなく、その方に履かれた上履きもハサミで刻まれてみる形もなかった。当然、靴下のある方の足にはそんな上履きすら履かれていない。 登校前まではおそらくまともな格好であったと思われるが、登校後はまったくその形を止めていなかった。クラスの誰もがその様子をみて異様だと感じているにも関わらず、学活でも職員会議の議題にもあがっていない。ソレは、いじめっこであったグループが学校や生徒に多大な権力を振るっていたからだろう。 とはいえ、そんな悪環境が長く続くハズもない。流れる水のように、澱んだ水がその場に留まることはなかった。 そう、──新しい水が流れ込んできたのだ。ソレは、新たな権力者で新たな支配者でもあった。 季節外れの転校生が突如現れてから、いじめられていた少年の立ち位置はぐるりと変わった。ボス猿に認められたメス猿のように、少年の手には大きな権力が舞い降りたのだ。ソレにより、いままで彼をいじめていた者は彼に怯え、彼に膝まついた。 そして、少年に媚を売り、いじめていたことをなかったことにして欲しいと切望する有り様だった。しかしながら、彼はその権力を振るわず、だた転校生の後ろに隠れるばかりでなにもしなかった。 だが、少年は子犬のようにべったりと転校生の傍から離れず、憧れの眼差しで彼をみる。少年からしたら、彼は救世主でヒーローなのだからソレは仕方がないことだ。 ────ソレから、月日が流れるごとに彼らの立ち位置はこう変わっていた。級友、無二の親友、恋人同士と。 ソレは誰もが口に出すこともなく、彼らはそういう関係になって───────いまにいきつく。  

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