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第11話
『俺と結婚してください!』
昔から、育ちの良さそうなクソ生意気だけど顔は可愛いガキだった。
小さくて、警戒する必要も無くて、しかも恋愛対象じゃない。
そんな子どもに、10年ぶりに半ば強制的に外に連れ出され、行く場所行く場所で大量の荷物を受け取り、着いた先は都内一等地。
高級住宅が並ぶ閑静な場所で、坂を上がった先に大きな門が見えてきたのだ。
「おい」
「なんですか」
「門の向こうが見えないが……」
「ああ、庭です」
あっくんは上機嫌で答え、自動で開いた門を車で抜ける。
すると、湖みたいな池が見え、庭園が見え、テニスコートが見え、その先にやっと古き良き日本家屋が見えてきた。
門から、家まで何百メートルあるんだよ。
「さて、二人の愛の巣に入る前に確認です、和葉さん」
「なんだよ。健康状態か?」
俺の臓器は多分綺麗だぞ。
「この先、女性と結婚したいと思ってますか?」
真っ直ぐな目。
尋ねられた言葉は、俺を10年ぶりに現実へ引き戻してきやがった。
「答えは、ノーだ」
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