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第10話
気付いてしまった俺は、花束を押し付けると、扉を閉めようと後ろへ下がる。
「無駄ですよ。和葉さんの部屋の鍵も貰ってます」
「ぞ、臓器は売らないぞ!」
「……?」
不思議そうな顔をして首を傾げているが、とんだ曲者だ。
そんな純粋な顔をして、とんでもない。
「俺の親から金で俺を買ったんだろ。病気らしい病気はしてないし、煙草は止めたし、俺の臓器は綺麗だろうからな。そうか。竜宮海運は、闇の取引で臓器を世界各地に輸出して、税を成してるんだな」
俺の臓器は、一個も無駄なく売られるんだ。
警察の恰好をしたって、分かる。
俺は結婚したって周囲に言いふらして、行方不明にさせて……。
「和葉さーん。ネガティブな妄想から戻ってきてくださーい」
はあ、と困惑したようにため息を吐いたあと、あっくんはふわりと笑った。
「何を言っても無駄っぽいので、強制的に新居に浚いますね」
「は、え?」
腕を掴まれ呆然としている間に、腰に手を回され、あれよあれよと抱えられてしまった。
「もう諦めました。――結婚したあとに、好きになってくれたらいいです」
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