186 / 268
第188話
「自分のことは自分で責任を持つ。今日は絶対無理をさせると思ったから、俺は学業よりパートナーの体調を取った。けれどパートナーに責任はない。だから俺はこの嘘に後悔はしていない。必要とあらば誰にでも頭を下げるよ。で、立川市長がいつ来るの?」
頭を掻き上げて即席でまとめながら、静かに言う。本当は今すぐ脱ぎながら和葉さんの居る風呂場まで走っていきたい。
「市長がご結婚のお祝いに、プレゼントをしたいと」
「……あまり市長が竜宮家に何かを送るのは止めた方がいいと思うけど」
五年かけた大きな賭けだった。
父や祖父に頼み、テレビ局の人気のあるニュース番組に手あたり次第スポンサーにつき、放送に口を出せる権力を手に入れ、立川市長を潜りこませた。
市長も元使用人の男性とお付き合いしていたので、それを堂々と宣言し恋人と手を繋いで歩ける街を作りたいと叫び続け、彼を肯定する著名人ばかりニュースに出し同性結婚への大きな促進として、まずメディアを買収した。
その盟友とも言える市長だが、あまり金銭的なつながりは困る。
「プレゼントは、沖縄の別荘です」
「金額以前の問題だ!」
ともだちにシェアしよう!