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第270話

両手を広げると、彼は嬉しそうに抱き着いてきた。 ああ。 あっくんの匂いが好き。引き締まった筋肉が好き。 掠れてちょっとセクシーなのに甘えてくる声が好き。 俺のことになると、格好いいのにお馬鹿な発言するのが可愛い。 全部好きだ。指を入れさせてほしいし喘いでくれたらもっとときめくかもしれないけど現状でも俺はあっくんが好きすぎて、あっくんが存在してくれているだけで生きていてよかったなって思ってる。 「この世に、あっくんより可愛い生き物っているのだろうか」 「和葉さんですね」 「あっくんだよ」 「和葉さんですよお」 「こいつー」 「きゃー」 鼻を摘まんだら、女子みたいな可愛い声をあげたので、乳首を摘まんでみた。 「あーん」 「……乳首も新婚旅行中に開発しようか。吸引機あるよ」 「……え、和葉さんに使いたい」 お互い服の上から乳首の位置当てゲームをして、一番近かった相手が道具を使おうって言ったのにお互い一発で当ててしまった。 そんな風にお互いの浴衣の胸に手を入れたまま眠ってしまった。 起きたら、座敷牢にいたはずのネコさんたちが全員俺たちの布団の中にいて驚いた。 そして同時に、全く一ミリも伸びていない下の毛に絶望も感じたのだった。 新婚旅行へ出発の朝――。 俺はトイレで必死に股間に育毛剤をふりかけて、生えることを祈った。

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