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第5話:夏の終わりは。

***  境内の脇にある仮設トイレから出てきた翼を、誠司は申し訳なさそうな顔で迎えた。 「まさか、中出しとか、ウケる!」 「……ごめん」 「すげー量だったぜ、あとからあとから出てくんの」 「本当に申し訳ない」 「いいって」  ニカッと笑う翼の笑顔が眩しかった。 「すっきりしたか? チンコも心も」  何度も何度も翼の中に吐き出しておいて、誠司は頷くしかない。 「俺のケツが役に立ってよかったぜ」  役に立ったどころか、新たな扉が開きそうなくらい、気持ちよかった。  満足げな翼を横目に誠司は呟いた。 「翼は、優しい男なんだね」 「よせやーい。俺っちは気持ちいいことしたかっただけ。それにこういうのって女より男のほうが面倒くさくないし」  優しくないはずはない。あのとき、翼は男連れの清華を自分に見せないようにしてくれた。気づかなければ、知らなければ幸せなこともある。こんなにチャラチャラしてるように見えて、咄嗟にその判断ができるくらいには、翼は常識人なのだ。  でも、きっと翼とはこれっきり、二度はない。そんな気がした。 「今日は楽しかったよ」 「おう、またどっかで会えたら頼むわ。セイジのチンコ、超きもちいいし」 「それだけを褒められてる気がする」 「真面目で誠実で、チンコがデカい、ほら、褒めるとこ増えたぜ」 「あんまり人前で言えないよ」 「はっはっは。また、ヤろうぜ」  そう言いつつも翼は、別れ際に連絡先を教えることも、次に会う約束もしなかった。  それは当然だ。だって、今日は祭りの夜にハメを外しただけなのだから。  こんなに熱くなった夜は、もう二度とこない。  あいつがいなきゃ、こんなに熱くなることなんてない。  翌日、誠司は清香に連絡をした。 「誠司くん? あ、昨日はごめんね」 「大丈夫だよ。ねぇ清香さえよかったら、ダブルデート仕切り直し、しない?」 「え?」 「せっかくだしさ。僕も清香の友達と、その彼氏とも会ってみたいんだ」 「う、うん。それはいいけど……」  一晩考えた。  スリル満点の甘い夜を一緒に過ごしたあいつは、自分に新しい世界を見せてくれた。  あの暑い夏の夜、熱帯夜が見せた幻は、誠司の心に新たな火をつけた。  自分では消せそうにない。これは夏の暑さじゃなく、あいつのせい。  次に会ったときは、自分から誘うと決めた。  また、あの熱い夜を一緒に過ごしたいから。  

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