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謎のイケメン
「なぁ、にいちゃん」
肩を叩かれたと同時に声をかけられ、現実へと戻ってきた。
「はいいっ!」
ビクビクしながら振り向くと、タバコを咥え、黒色で肩まで付くくらいの髪にパーマがかかった男性がクククッと笑っていた。
「そんなに驚かせたか? そりゃ、すまんかったな」
今度は肩を2回叩いてくる彼。
目尻に皺を寄せても完全には潰れないくらいの大きい瞳に、口の上下に棚引く髭がある彼はワイルドなイケメンな気がする。
「……何か用ですか?」
でも警戒心剥き出しにして僕は問いかける。
「いや、なかなか特徴のないおにいさんやなぁと思うて……昔の俺にそっくり」
彼は大きい瞳でジッと見つめ、ニヤッと口角を上げた。
「あと、月額サービスがなんとかって言うてたから来てもうた」
これ、やるわと言って彼が渡して来たのは手作り感満載のチラシ。
チカチカするほどの色遣いの文字とこの世のものではないような絵が散らばっている。
「月額1万円で6人の癒しのスペシャリストが貴方をあの手この手で楽しませましょう……?」
なんとか読んで彼の方を見ると、煙を静かに吐き、満足気な顔をしていた。
「まずは1週間試してみて、嫌なら1万円返金するし、良いなら1ヶ月っていう単純なシステムでな」
「なんかまじないみたいな四角いやつをスマホで読み込むか書いてある連絡先に電話すれば『おいで屋』に繋がるからやってみ?」
『おいで屋』なんて……聞いたことない。
「あの、『おいで屋』ってどこにあるんですか?」
「ああ、自分の家に呼ぶやつやから気にせんといて……あとはおいおいな」
呆然とする僕を尻目に彼はまたタバコを口に当て煙を吹いた後、下に落としてグリグリと足で踏み潰す。
「今日のおっちゃんの仕事は終わりや……ちゃんと連絡するんやで」
「おっちゃんの特別サービスやから」
したり顔をした彼は僕に背を向けて、右手を軽く振りながら去っていった。
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