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筆慣らし

 コトコトとスパイスの香りがした頃になんとなくの情報を書き終え、サガに許可を取って保存をしたら……抽象的だけどなんかすごい絵が現れた。 元に戻そうと横にスワイプをしたら、今度は『柄谷』とひたすら書かれたものが出てきた。 「つか、や……? サガ、ごめん。変なの出しちゃった」 「んー? ああ、大丈夫やでぇ……それ筆慣らしやからぁ」 コンロの火を止めた後、僕の方に身体ごと向けてニコリと微笑むサガ。  「漢字のやつは‘‘からや’’って呼んで柄谷が書いたやつやし、なんかよくわからんけどすごい絵のやつは羽鳥が描いたやつ……みんな僕の仲間、平太がこれから出会う人たちのものやでぇ」 「なんなら、直感で好きな順に並べてぇや……それでスケジュール決めるわぁ」 意外とみんな個性出てるんよねぇ……と目を細めて、ふふんと笑うサガに仲間との絆を感じた。 花とか手とかの絵系もあれば、『ブレイクスルー』とか『奥まで飲み込め』とかの言葉系もあって、本当に直感で並べてみる。 ただし、奇妙な絵がたくさん描かれてたのはチラシの絵と同じ雰囲気だったから、エッちゃんさんのだとすぐにわかった。  「はい、出来たでぇ……はよ食べよぉ」 両手にカレー皿を持って早足でやってきたサガにありがとうと声をかけると、なぜかありがとぉと柔らかい笑顔付きで返されて、ドキッとした。 「平太はらっきょう派? 福神漬け派?」 「じゃあ、福神漬けにしようかな」 「僕はどっちも入れるぅ」 「あっ、ずるくね!?」 親友みたいなやり取りをした後、今度は2人で手を合わせていただきますをしてからカレーを食べる。 ちょっと辛いけど甘さもあって美味しかった。  なにより美味しく感じたのは 「あつ、はふっ……うん、うまいわぁ」 熱さと口に運んだ量の多さで頬を膨らませながらも、ちょっと口角を上げて食べるサガがとても幸せそうだったからかな。

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