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ネギくん

 チョキチョキと髪を切る音は聞こえてくるのに、切られてる感覚は全然ない。 不安になって鏡を見ると、カイリは口角を上げてはさみとくしを駆使してちゃんと切っていて、ふわふわと髪の毛が舞っていた。 やっぱりカリスマ美容師ってすごいなと思って見惚れる。 じゃなくても、イケメンだし、優しいし、オレンジの革ジャンがかっこいいし、もちろん小豆色のTシャツもイケてる……ん? 小豆色? 小豆色って 『平太しゃん』 「うえぇぇぇぇ!?」 思わず大声を上げる僕に、カイリがビクッと身体を震わせて、なにぃ!?と言う。 「カイリって好きな人いる?」 「おるけど、どうした?」 目尻がもっと下がって困った顔をするカイリ。 「その人って……三角モト?」 そう言ったらカイリは目を見開いて固まった。 いや、そうだとしても答えづらいと思う……だってそうだとしたら、カイリはドSってことになるし。 「ああ、そういうことか……びっくりしたぁ」 そう言って声を出して明るく笑うカイリ。 「これはえんじ色……どっちかっていうと紫だから、三角とは違う色だよっていうか、そんなことになったらアートに殺されるわ」 ああ、危なかったってちょっと高い声で笑いながらそう言うと、ピンを外してまた髪を切り始めた。  モトの相手はツクっていうのにも驚いたけど、ラブホテルの時のツクを思い出せば、なんとなく腑に落ちる。 「俺の相手は……ネギくん」 カイリは愛おしそうに言うけど、誰だかわからなかった。 「へいたんがまだ会ってないホストの1人で、根切(ねぎり)っていう人……ドSでちょっと変な英語を使うんだ」 早くミートゥーしたいわって拗ねてんのという声は楽しそうで、本当に好きなんだなと思う。 「英語なら、カイリの方がすごいんじゃないの?」 「まぁ、ケンカの時はちゃんとした英語で捲し立てたら勝てるけど『I'll take care of you』って言われて、アレを始めたら、もう……」 そう言って顔を真っ赤にして悶えるカイリをみたら、可愛いなと思ってちょっと雄の部分が芽生える。 「I'll take care of you……so trust me?」 僕がそう言うと、カイリは蕩けた目をしていたが、唇を噛み締めた。 「ちゃんとへいたんをかっこよくしてから、たっぷりと……お願いします」 カイリは薄くなった後頭部にキスを落としてくれた。

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