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みんなの愛

 顔の毛も剃ってもらってさっぱりした僕の髪に、初めて黒以外の色が入る。 なんかおいで屋さんに僕の知らないところを開発していただいてる気がする……いろんな意味で。 「さっと、あとは20分くらい待ってな」 カイリはカバーを被せると、僕の視界から消えた。  「俺って初めての人をかなり警戒するんだけどさ、今回は全くなかったんだよな」 自然なトーンの声が聞こえてきたから表情を見たかったけど、動くわけにもいかず黙って聞く。 「アートが似顔絵を書いてみんなに配ったから顔もわかるし、みんなからも悪い話はしないし。なにより、エッちゃんがちょっとだけでも関わりたいって言ったから」 「エッちゃんさんが……?」 こうなるきっかけとアフターケアをしてくれる謎のイケメンエッちゃんさん……彼が最初に気に入ってくれたんだよな。 「あの人、1万円サービスのお客さんを見つけたら完全に出張ホストをやめて経営の方に専念するはずだったんだけどさ」 「へいたんを見つけた途端になんか燃えてきたらしくて……でも6人でやる約束だったから電話だけになってんのに、もうさ、また会いたいってうるさくて」 ネギくんと一緒にぶーぶー言ってんの、と姿は見えないけど、さっきと変わらない声でそういうカイリに信じられない気持ちになる。 「アートも新しいアダルトグッズがないか聞いてくるし、三角もアートやサガに聞いた言葉責めのメモを書き溜めて、それをプレゼントしたいみたいなことを言ってるし」 「会ってないネギくんでさえ『マニー以上のことをしたいわ、データメニーにキャッチしてこい』って言われてきたもん」 もうマシンガントークのように愛の数々を語られたら、恥ずかしくて溶けてしまいそうだ。

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