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柄谷カイリ

「これでいい? 新しい自分になったと思うよ」 優しく声で言われて、僕は恐る恐る顔を上げる。 前の鏡に映るのは誰だろうって思うくらいになっていて、なんか実感が湧かなくてふわふわした感想しか言えない。 でも、なんかワクワクする気持ちが溢れてきた。 「せっかくだからぁ、へいちゃんの新しい世界への門出を祝ってみんなでご飯行こうよぉ」 なんてツクの提案に賛成する言葉を口々に言うみんな。 「ダ〜メ! 今日は俺の日だから」 カイリは強く主張して、僕の頭を撫でた。 「なんでぇよ、どうせいつもんところで昼メシ食うんちゃうの?」 批判の声を上げるサガに、わかってないわとため息をつくカイリ。 「なんて言われようと、へいたんは俺だけのもん」 言い終わらないうちに耳たぶを噛まれたから、思わず喘ぎ声を上げてしまった。 「ご、ご飯食べる時にはテルしろよ……ヘイユー! ガラを貸すのはナウだけやからな!!」 根切さんは捨てゼリフを言い、他のみんなは言葉にならない言葉を言った後、ププッと電子音が聞こえた。 「さっ、邪魔者は消えたっと」 また耳を舐めながら被ってたマントとタオルを剥がしていくカイリ。 「なんでここまでしたか、教えてあげよっか?」 カイリは耳の裏から首を舐め、後ろの髪に顔を押し付けてリップ音を立てる。 「自分で作り上げた理想に襲われたいからだよ……やってくれるよな?」 その甘い囁きに自分の知らない部分が疼いて……返事をする前にカイリを大きなベッドに押し倒していた。

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