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イフストーリー 大学生

 昼休みになって、凌平君は学食を、俺はお弁当を食べる。 「昨日も思ったけど、めちゃくちゃ美味そうだな。」 「うん、美味しいよ。」  命のお弁当を凌平君が褒めてくれる。俺が褒められたわけじゃないのに嬉しい。 「彼女の名前なんて言うの?」 「黒沼命だよ」  言った後で、命の名前を教えてよかったのか不安になった。 「は? ユキ、お前の苗字は?」 「え? 黒沼だけど……」 「結婚してんのかっ!?」  凌平君が大声で言うから驚いて背筋がピンと伸びる。周りにいた人達の視線も俺達に向いてドキドキした。  結婚……はしていない。というかできない。  でも、命も俺も、結婚したいと思ってはいる。 「えへへ」 「えへへ、じゃねえよ!」  誤魔化して笑ってみせると強烈なツッコミを返された。  驚いているとスマートフォンが震えて、画面を見れば命からの電話だった。 「凌平君ごめんね、電話でてくる。」 「遠慮せずにここでどうぞ。」 「あ、う、うん。」  ここでどうぞって言われてるのに、場所を変えるなんておかしいと思って、その場で電話に出る。 「もしもし」 「今大丈夫?」 「うん、大丈夫。」  命の声を聞くとすごく落ち着く。  勝手に頬が緩んで、小さく息を吐いた。 「学校どう?」 「えっと……朝、ちょっとだけしんどかったんだけど、今は大丈夫だよ。凌平君とお話してて、楽しいの。」 「そう、よかった。」  凌平君がじーっと俺を見てくる。首を傾げると、顔の前で手を振って何でもないと伝えてきた。 「今日も迎えに行くから。」 「うん。ありがとう」 「トラがユキに会いたいって。そのままトラの所行こうと思うんだけど、いい?」 「うん! トラさんに会えるの嬉しい。」  トラさんに会うのは久しぶり。何かお菓子を持って行きたい。 「ねえねえ、お菓子買ってから行こう? トラさん甘いお菓子好きだから。」 「そうだな。」  それから少しだけ話をして、電話を切る。  相変わらず俺をじっと見ていた凌平君は、頬杖を着いて唇を尖らせていた。 「どうしたの?」 「幸せそうだから妬んでる」 「妬む?」 「今の電話、彼女だろ? 電話に出た途端表情ゆるゆるになってた。」  恥ずかしくて両手で顔を隠す。 「いやいや、もう遅いから。」  ツッコまれて目だけ覗かせると、その部分だけ凌平君の手に覆われる。 「やめろ! その顔は万人を落とす顔だ!」  凌平君は何だか時々おかしなことを言う。 「ほら、早く食え。あとちょっとしか時間ないから」 「ごめんね、急ぐね。」  急いで命の作ってくれたお弁当を平らげて、走って次の講義室に向かった。

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