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‥‥‥‥部屋の中が、明るい‥‥
‥‥朝?いつの間に?
おれ‥‥俺、意識飛ばしたんだ。
初めて、だ。
セックスで意識失くしたの、初めて‥‥
腹に回る優大の、手。
顔が見たくて向きを変える。‥‥優大。
凄く、いい匂い。
優大の、顔、髪、肩。
指を滑らせて、感じる、優大を。
「‥‥ん‥‥なおき‥‥、直希、起きたんだ?」
「優大、おはよう。」
「おはよう‥‥今何時?」
「ええと‥‥うそ、四時だ。え、こんなに明るいの?」
「‥‥ああ、夏だな。」
優大が体を起こす。胡坐に座り直して。
前髪を弄ってくる優大の手がくすぐったい。
「直希、体、大丈夫?」
「昨夜‥‥、ごめん、俺、」
「いいよ。ちょっと驚いたけど。‥‥本当に気持ちよさそうだった。」
穏やかな、満足そうな、優大の顔。
汗の跡の残る髪。
俺の奇跡。
俺も優大に触りたい。
あ、でも‥‥
このまま体を起こしたら、垂れてくる‥‥?
「直希も起きる?」
「うん‥‥でも、」
「ん?ああ、大丈夫だよ。外に出した。」
「‥‥ごめん。」
「だからいいんだって。‥‥あんなに感じてくれる直希を見られたんだから‥‥」
優大の指が頬に下りてくる。
指先で鼻の頭を掻かれて。
「それでもお釣りがくる。」
指は眉間を通って、額から耳へ、顎へ下りて、唇へ。
優大の指先を咥える。
舌で擽って。
口を閉じて目を閉じて、優大の指先に吸い付く。
そっと目を開ければ、俺を見ている優大。
視線が絡まる。
お互いに口元が緩んで‥‥
どちらからともなく笑いだす。
優大に手を引かれて体を起こして。
勢いのまま優大にしがみつく!
「おはよ、優大。」
「おはよう、直希。」
俺を包む優大の匂い。
ああ、気持ちいい!
啄む様なキスを音を立てて終わらせると、優大がベッドから降りる。
裸のままカーテンの隙間に立って、カーテンの端を握っている。
外からの光の中で、シルエットになる優大。
彫刻みたいで綺麗だ。
「カーテン、開いてたな。」
「少しね。‥‥空、よく晴れてる?」
「直希?‥‥待って。」
ベッドから降りた俺に優大が近づいてきて‥‥
足元のバスタオルを俺の腰に巻いてる。
「優大は?」
「俺はいいの。でも、直希が他の誰かに見られるのは、駄目。」
「温泉は一緒に入るじゃん。みーんなに見られてるけど?」
「温泉はみんなに見せつけてるの。俺の直希はこんなに可愛いぞ、ってね。」
「なんだよ、それ。」
二人でカーテンの隙間から空を覗く。
空はまだ白っぽくて、一日はまだ始まる前だって言っているみたいだ。
優大が後ろから抱き締めてくる。
温かさと匂いに寄り掛かる。
「まだ腹減らないなぁ‥‥」
「直希、こんな朝早くから?」
「昨日のカレー、食べたいじゃん?」
「後でな。‥‥そうだ、カレー、買いに行こうか。」
「ん?」
「農業高校のカレー、限定だよね?買いに行こう。」
「電車?車?」
「そうだな‥‥車にして、近くの温泉泊まろうか。」
「露天風呂ある所がいいな。」
「そうだな。あと、隣の県なら有名な神社があるよな、」
「樹齢千年のご神木?」
「そうそう。拝みにいこう。」
「あ、でも限定販売、いつまでだろう?」
「売ってるの道の駅だろ?電話で問い合わせが速いかな。」
「いつまでか聞いてみるね。‥‥でもさ、今日と明日は、さ、」
「‥‥二人で過ごす?」
「うん。」
優大を振り返る。
キスが降りてくる。
朝の光と、優大の匂い、休みはあと丸二日。
「こんな時間に起きてるのって、俺達の他はコンビニの店員ぐらい?」
「‥‥あとは新聞配達とか?‥‥夜勤明けとか。」
「結構いるんだ‥‥優大、外、出てみない?」
「いいね。散歩するか。‥‥その前にシャワー浴びよう。」
「このまま‥‥じゃ、駄目かな‥‥」
‥‥優大の匂いと一緒に歩きたい。
やっぱり優大の匂いが、俺は好き。
でも。
昨夜、知ったんだ。
きっと一生忘れることは無い。
匂いの向こうにいる、俺に与えられた奇跡、優大。
大切な優大が纏う匂い、それが、俺が好きな匂いなんだ。
「俺はいいけど‥‥直希、いいの?」
「なんで?」
「‥‥昨夜のままで。」
優大が腰を撫でる‥‥あ!
‥‥でも、‥‥でも。
「いいよ。優大と歩きたい。」
優大が微笑む。これ以上ないくらいに、嬉しそうに。
キスをもらって、キスを返して、目が合って、もう一度キスをして。
「顔と髪くらいは拭かせてくれよ。」
「ん。」
頭を撫でられて、額にキスをされて。
俺から離れた優大が、廊下に続くドアに向かう。
俺はクローゼットに。
振り返れば、カーテンの隙間の向こうに、光。
ガラスの外から部屋に溢れて、光の道を創っている‥‥
今日も、暑くなるかな。
fin.
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