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コロシテシマエ
「ふうん、面白い。お前のことよく知らないけど、別に嫌いじゃないし。夏の思い出のひとつだと思えば、男同士の火遊びも楽しそうじゃない?
オレ、今まで告られて断ったことないんだよね。
このオレを誘ったんだ、お前の本気を見せてもらおうじゃないか。そうだな、勉強漬けの合宿で娯楽も無いし、今夜は無風の熱帯夜でイライラするから、あの風鈴でも鳴らしてよ。マジックでもトリックでも神頼みでもしてさ、いい音鳴らしてみせてよ。それが付き合う条件。
…オレのこと、堕としてみろよ」
眼鏡の内側に意地の悪い好奇心をくゆらせ、値踏みするように目の前の男を眺めた。
「アンタ、案外面白いことを言う奴だったんだな。」
やっぱり直に喋ってみないとわかんないもんだねぇとニヤリと笑うと、男はオレに念押しした。
「手を使わなきゃいいんだよな?」
上目遣いの圧に負けて、無言で頷くしかできなかった。
目の前の男は、腰まで下げ気味に履いていた薄いグレーのスウェットパンツを引き上げ、ウエストの紐を締め直した。
そのまま無言で軒下に歩み寄り、オレの方に向いて深呼吸をひとつすると……大きな弧を描く後ろ回し蹴りを繰り出し、硝子の風鈴の位置で寸止めした。
ピシリと音がして、空気が凍り付く。
「叩き割ろうかと思ったけど、それじゃつまらないから止めた。あれ?止めきれなかったかー。ヒビが入ってる。」
怖いと言うより、見惚れた。
「ほら、鳴っただろ?聞こえなかった?
ほらほら、今度はお前の番だよ。鳴らす番じゃないよ、鳴く番だって。さて、どんな音で鳴くんだろうなぁ」
自慢げに顎を上げて、オレを見下ろす。ご褒美くれよ、と、ゴツい手がオレの耳の後ろに伸びてきた。
「こっちの寸止めは無しだからな」
熱を帯びた視線に負けて、頷くしかできなかった。
[殺してしまえ編 おしまい]
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短いお話なのに、3人の個性が出ていてすごかったです! ポジティブ脳天気くんと理屈くんと力業くん。 それぞれの魅力が光っていて美味しかったです。 ご馳走様です。
氷魚彰人様 🌾コメントありがとうございます! そうなんですよ、短い上に前半は使い回し(言い方)! 割とハードルが低いノンケを、どうやって堕とそうかとひと夏遊ばせていただきました( • ̀ω•́ )✧ お粗末様でした。
さすがかーさん!!!全部笑いましたwwww 上昇気流の彼が理屈っぽくて結構好きですwww
Cieli様 コメありがとうございますー!! 2番目クンですね!理詰めで流れをコントロールするだけでなく、計算された行動で相手の警戒心を緩める算段です。…良いネゴシエイターになれそうでしょ? ツイッターでも予告した通り、案外簡単に堕ちる設定のメガネ君ですw
うあー!面白かったです! 3人とも魅力的だけど、最後の彼のエロさにやられましたー(ノシ・∀・)ノシ ごちそうさまでした💕
さやいんげん様 うおー!コメントありがとうございます😊 3番目(そういやこの話、全員名前が無い)が人気ありますねー!(੭ु ˃̶͈̀ ω ˂̶͈́)੭ु⁾⁾ 草稿時、単なる短気なドSだったのに、書いてるうちに目ヂカラがw
さすがかーさん!!! 風鈴がいい仕事してます( 〃▽〃) いろんな堕とされ方があるんだなぁ‥‥!!!
ぼーま様 握りつぶすつもりだった風鈴ですが、土壇場で変わったんです(੭ु˙꒳˙)੭ु⁾⁾ 結果オーライ!閃きの方が上手く纏まることもありますよねw
いつもと違うテイストね!
せい様 コメントありがとうございます😊 そうそう(੭ु ˃̶͈̀ ω ˂̶͈́)੭ु⁾⁾いつもいい人揃いだから、腹立つ奴を書きたくてw