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前世と俺

「お願い、待って……清ッ!!」  俺は自分の叫ぶ声で目が覚めた。  いつもの夢だ。  何かを掴もうとするように、天井に向かって伸ばしていた手をぱたりとベッドに下ろした。  数回瞬きすると、目尻から涙が溢れた。  子供の頃から何度も見てる夢なのに、いまだに泣いてしまう。 「清道ー! 起きなさいよー、今日からでしょ!」  一階から母さんの声が聞こえた。  今日から俺は高校の寮に入るんだ。  全寮制の高校、逢望学園はいわゆる金持ち学園だ。  うちは平々凡々な一般家庭なので、逢望学園に入学するのはペンギンが空飛ぶみたいなもんだけど、まぁなんとかなった。   昔から俺には予知能力とゆうか、ちょっと感の鋭いところがあるんだよね。俺のアドバイスで姉ちゃんが宝くじを買ったら二等を当てたり、試験のヤマは百発百中だったりとか。  そんなこんなで俺は持てる運を総動員して、逢望学園に合格できたんだ。  俺はどうしても逢望に行く必要があった。  その理由は十二歳になった頃から見るようになった夢だ。  桜舞い散る中、一人の少年が俺を呼んでいる夢。  ただの夢じゃない。わかるんだ。彼は俺にとって大切な存在だって。  ちゃんとその顔が見たいのに、駆け寄ろうとすると、風が強く吹いて花弁が舞い上がり視界を遮ってしまう。  その夢の中のわずかな手がかりから調べたら、彼の着ているブレザーが逢望学園の制服だと分かった。  そして、俺は逢望学園を受験して見事合格した。  たった一つの目的の為に。 「絶対に清を見つけるんだ」  俺は強い決意を新たに起き上がった。

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