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現世と俺

 二学期が始まり、俺は委員長の部屋へお引越しした。  あっくんは寂しそうにしてたけど、一人暮らしで自炊スキルを磨くんだって豪語してた。  俺は相変わらず生徒会補佐、もとい、おやつ係をしてる。  お昼にはあっくんと委員長と生徒会メンバーと一緒にご飯を食べてる。  怒涛の一学期がうそみたいに、ゆっくりと穏やかな毎日が続いていた。 「キヨ、食堂行こう」  お昼休みの時間だ。あっくんが食堂に誘ってくれたけど、 「ごめん。委員長が風紀室に缶詰めらしいから、今日はあっちでお弁当食べるね」 「くそ、愛妻弁当かよ。羨ましい」  学園祭に向けて風紀も生徒会も忙しいみたい。でもランチだけは皆一緒に食べてたんだけどね。  俺はあっくんに「皆によろしくね」と伝えて、風紀室に急いだ。 「清道」  風紀室のドアを開けると、委員長が嬉しそうな顔で俺の名前を呼んだ。  同じ部屋で暮らしてるのに、たまには二人でお昼ご飯が食べたいんだって。  今日は委員長のわがままなんだ。  ちょっと嬉しい。やっぱり俺って、好きな相手の世話やくの好きなんだ。 「知ってると思うけど、肉じゃがだよ」 「知ってると思うけど、お前の作る肉じゃが好きなんだよ」  委員長の隣に座るとキスされた。甘すぎて恥ずかしいけど……。  今日という日は二度とない。  自然に過ごしてる平凡な毎日が全部大切なんだって感じてる。  このキスは今日だけ。  そして明日はまた新しいキスをする。  そうやって日々はすぎていくんだ。 「お、美味そうだ」  お弁当箱の蓋を開けた委員長が嬉しそうに笑ったので、今度は俺から委員長の唇にキスをした。 end.

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