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青嵐 4

午前の授業の終わりを告げるチャイムがなり、廊下の熱気を連れて薫が戻ってきた。 別の教室で講習を受けても自分の元に帰ってくる薫に立花は安堵する。 立花の隣でよく笑うようになった薫と、親しくなりたい連中に誘いをかけられる回数も増えてきた。 穏やかで口数の少ない薫の側は静かな時間が流れなぜか落ち着く。 癒しキャラだよな、とクラスのメンバーに囁かれていることに全く気が付かない薫の鈍さにまたみんな惹かれるのだ。 「お昼ここで食べる?」 立花の前の机に荷物を置き、薫が問う。 講習があるとはいえ学校自体は夏休みなので学食は閉まっている。 「どこいっても暑いよね」 春や秋によく利用する中庭のベンチや藤棚の下はこの時期暑くて閑散としている。 みんなエアコンの効いた部屋から出たがらず、思い思いに昼食をとり始めた。 薫はメロンパンを頬張りながら次の講習の課題をめくっている。 同じように立花もコンビニで買ってきたパンをかじる。 ふと目に入ったあるものを見て立花は息を飲んだ。 薫の手首の内側にある赤い痕。 虫刺されのようでいて、それとは違ううっ血痕。 あれはまるで…… 立花はいつかの会話を思い出した。 キスマークの付け方を知らなかった薫に知りたければ自分が教えると、そう言った。 あれからその話題に触れることはなく、忘れたものだと思っていた。 恋愛には興味がないように見えた薫に痕を残すような恋人がいるとは思えない。 では、誰が? 他人と距離を置き、触れることさえ避ける薫に近づける存在が自分以外にいることに立花はショックを受けた。 指先から熱が引いていく。 あれはただの虫刺されだと。 いや違う誰かの執着の痕だと。 冷えていく体に反して思考は熱を持ちはじめた。 「ねぇ、薫?」 自分で思うより凍りついた声が出ていた。

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