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第143話

「えっ、なんで!?パパとママの次に好きなの(あお)くんだって言ってたじゃん、いっつも蒼くんスキスキって言ってくれてるじゃん!?」 花村さんがショックを受けた顔をする。 「しゃんばん!」 くるみちゃんが指を2本突き立てる。 「3番?くるみ、指が一本足りないよ」 八神さんの大きな手が、小さなくるみちゃんの指をもう1本立てさせる。 「ママが1番、パパが2番、蒼くんが3番だろ?」 「ママとパパは、とくべちゅ」 そう言って、また首を振るくるみちゃん。 「じゃあ、1番は誰なんだよう。保育園で好きな子できちゃったの?」 花村さんが口を尖らせると、くるみちゃんは 「いちばん!」 と叫んで、ビシリと俺を指さした。 一瞬の沈黙の後、大爆笑が起きる。 「ハハハッ、翠、これは相当な面食いだぞ。ちゃんと一番王子様っぽいのを選んでる」 八神さんが目尻を下げて笑う。 「くるみ、人を指さしちゃ駄目よ」 そう言いながらも翠さんは笑いが止まらないようで、目尻に涙を溜めている。 「ひ、ひどい。今日会ったばかりなのに・・・、じゃあ、次は蒼くん?指の2の方が合ってたんじゃないの?」 くるみちゃんはムッとした顔をしたかと思うと、トコトコ歩いて 「にばん!」 そう声高にのたまって、陽向の手を掴んだ。 「ええーっ!?」 花村さんの絶叫とみんなの爆笑が混ざり合う。 結局、くるみちゃんは花村さんの膝の上を断固拒否し、俺の膝に鎮座して写真におさまった。 その場でデジタルデータを貰って、皆で共有できるようにパソコンで写真をアップロードする。 くるみちゃんのお陰で、みんな屈託のない、いい笑顔だ。 陽向も曇りのない、とてもいい顔をしている。 そう、小太郎の写真に写っているあの笑顔のように。 「オムツだって取り換えてやったのにー。うちに遊びに来た時、いっつも帰りたくないって号泣してたのにー」 花村さんに泣きつかれて、笑いをこらえながら慰めている陽向を、皆の笑顔が取り囲んでいる。 そうだ。 この写真も大きく引き伸ばして、小太郎の写真の横に飾ろう。 皆からの愛に包まれて、心からの笑顔を取り戻した、陽向の記念写真を。 それは、とてもいい考えのように思えた。 < 完 > ☆次ページにあとがきと期間限定ショートストーリーのお知らせがございます。ぜひ、ご覧ください。

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