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リコリス/甘草[7]
※性描写あり
「ほ、り...っおい!やめ...」
ふたりして雪崩込むように倒れたベッドの上で、堀の手は一刻も早く佐山を暴こうと性急に動く。
その手をぐいぐいと押しやりながら佐山は静止を呼びかけるが、目の前の恋人は一向に聞く気配がない。堀は佐山へと覆いかぶさり、その薄い唇へと口付けた。
「ん...」
態度からは余裕のなさが伺えるのに、触れ方は優しいのだからズルい。佐山は触れるだけのキスにゆっくりと双眸を細める。
「っふ、あ...ん...んぅ...」
その内侵入してきた堀の舌。佐山はもう止めはしなかった。堀は自分の首裏に回された佐山の腕に気を良くして、赤い果実を舌で堪能する。
「...っは、ぁ...ほ、り」
「先輩...」
2週間前にもここで同様に体を重ねた。
けれど2週間前と今とでは気持ちも関係性も、まるで違う。
「...ッあ、や、だ」
少なくとも、前回はこうして堀から佐山に触れることはなかった。堀は黒カットソーの裾を掴むとまくり上げ、佐山の腹から胸にかけてを露わにする。
色白の肌の下には形のいい筋肉が薄く敷かれていて、佐山が呼吸をする度それは微かに隆起した。堀は佐山の薄い腹に指を滑らすと、頂きにあるふたつの飾りをきゅっと摘む。佐山がひくりと息を詰めた。
「ここ、気持ちいですか?」
ころころと指の腹で転がすと、少しずつ飾りは存在を主張し始める。佐山はイヤイヤとかぶりを振って、拒絶とは名ばかりの態度をとった。
「き、もちくない...!や、だって...っ、ひあ!」
嘘つき。堀は佐山の胸の尖りに舌を這わす。淫靡な音を響かせて吸い付くと、呼応するように彼の身体は嬌声を上げた。
両の粒とも等しく唾液で濡らしてやると、堀の手は次いで下肢へと伸びていく。ついでに上下の衣服も取り払った。何も身に纏うものがなくなった佐山を真下に組み敷いて、堀は相好を崩す。
「綺麗です。先輩、」
「...思ってたけどおまえ、目おかしいよ。」
ふいっとよそを向く佐山。可愛くないことを言っていても、それが照れ隠しであることは想像にかたくない。堀は既に勃ち上がっている佐山のものに指をからめた。
「あっ!んゃ、んっ、んふ...ぅ」
上下に扱き始めたあと、すかさず佐山の口を塞いだ堀はぴちゃぴちゃと舌を擦り合わせ歯列をなぞる。予期しなかった快感が上からも下からもやってきたのだ。驚きに目を丸めた佐山だったが、すぐに順応し、堀の愛撫に溶かされていく。
「っや、ほり、前ばっか」
「...いやですか?じゃあ、先輩のいい場所教えてください」
顔を背けて口付けを中断した佐山に堀が問うた。しばらく視線をさ迷わせた佐山は、吐息に埋もれそうなほど小さな声で呟く。
「......後ろ。さわって、いれて」
「!」
「...っ、早くしろ!ばか!」
佐山は以前と同様ベット脇の収納棚に手を突っ込むとローションとゴムを乱暴に投げてよこしてきた。それを手に受け止め、八の字眉を描きながら頭を掻く堀。
「参ったな...」
「...なにが」
訝しげにこちらを見る佐山に、堀は苦笑を返した。
「優しくできなかったら、ごめんなさい。」
「ッああ!あっ、やっ...ぁん!」
堀の中心が佐山を抉る。暴かれた佐山の弱点を狙って突き上げてくるものだから、受け身になる側はたまったものではない。
既に正常位で2回、対面座位で1回達している佐山は今も後ろから腰を打ち付けてくる男によってよがり啼かされている。堀宏人という男は普段好青年な面を装っておいて、思いの外性欲が強かった。
枕に突っ伏し2つ年下の恋人によって翻弄されながら喘いでいると、不意に視点が上をむく。挿入されたまま身体をだけが方向を変え、その摩擦にまた喘いだ。
「...っ?な、に...」
息も絶え絶えに堀を見上げる佐山。そのあまりの色香に堀は大きく息を吐いた。潤んだ瞳に荒い息、上気した体全体には薄い朱がのっている。堀は佐山をそっと抱きしめると首筋にそっと顔を埋めた。すっかり蕩けた後口はそんな小さな動作でも容易に堀の陰茎を誘ってしまう。
「ぁ...」
「...先輩、好きです。」
「......」
「好きです。」
「......」
「すき。」
「...おれも...」
緩々と堀が腰を揺らした。びくびくと佐山の腿が震える。
「んぁ、あ、あ、あっ...」
先程までの激しさはなくとも、律動とともに零れる佐山の喘ぎ声は今までで一番よく感じ入り、堀の鼓膜を揺らす。
「ほり...っも、イく...ッ」
「俺もっ、先輩...!」
堀が入口から再奥にかけて大きく佐山を穿った時、パンッと目の前が弾けて、二人同時に達した。
「はあ、はあ......堀、」
「ッはい...?」
薄膜越しに存在する堀の気配に、体温に、佐山は瞳を瞑る。
「...んーん、やっぱなんでもない。」
自分を抱く初恋の人を感じながら、佐山は────在りし日の少女は────笑いながら今日二度目の涙を流した。
-第2話『リコリス/甘草』了-
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