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第1話
開いたスケジュール帳に思わずため息。
……もうすぐ、僕の誕生日。
なのに予定はまったくない。
去年は建人が随分前から準備していて、絶対に予定は入れるなとうるさかったのに。
もう目前に迫ってきているのに、今年はなにも云われない。
かといって聞くのはどうかと思うし。
それに、最近の建人はおかしい。
接待で遅くなることが増えた。
かといって、経費で回ってくる、領収書が増えているわけでもなく。
なにをやっているのか気になるところではある。
もしかして、僕のことが嫌いになった、とか?
その日、会社の廊下を歩いてたら、後ろから肩を叩かれた。
振り返ると、建人。
「あ、牧。
経費の請求っていつまでだっけ?」
「……今日まで」
馴れ馴れしく肩に載せてきた肘を払いのける。
「あっちゃー。
俺、全然整理してねーわ。
今日中でいいんだよな?」
再び肩に載せられた肘。
手はそのまま胸へと降りて僕を抱き寄せる。
いわゆるイケメンって奴の建人。
それに自分で云うのもなんだが、眼鏡イケメンで通ってる僕。
まわりの女性の目は釘付け……だが。
たぶん、変な意味で。
「離せ、莫迦」
「そんなに可愛いと、チューしたくなるだろ」
頬にふれる建人の手に、顔が熱くなっていく。
そんな僕たちに隠れた悲鳴が聞こえてくる。
「ふざけんな、莫迦」
「やっぱ可愛いな、牧は」
にやり、建人が笑って離れると、またしても起こる悲鳴。
ひらひらと手を振っていく建人をレンズ越しに睨んだところで意味はない。
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