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第2話
夜、帰ってきた建人の言葉にまたもや盛大にため息。
「明日から出張。
一泊二日の予定」
明後日は僕の誕生日なんだけど。
なんで出張なんて入れる?
「ああ、そう」
……はぁーっ。
僕の口から落ちたため息に、建人がにやりと笑う。
「もしかして史朗、俺がいないの淋しいの?」
「はっ。
そんなわけないだろ」
睨んでみたところで、建人はまったく堪えてない。
「可愛いなー、史朗は。
チューしたくなるだろ」
「だから。
会社でそんなこと云うなって」
眼鏡を抜こうと伸びてきた手を思いっきり払ってやったら、不服そうな顔をされた。
「あれはあれでいいんだよ。
ああいうふうに彼女たちの妄想通りに演じてやってれば、まさかそれがほんとだなんて思わないし」
「……そうか?」
そんな莫迦な、とは思うが、彼女たちが本当に、僕と建人が付き合ってると信じているとはさすがに思ってない。
「そうそう。
だから、さ」
油断してたら唇を塞がれた。
離れるとにやると笑う奴にむかつく。
それに。
「おまえ、最近の接待ってほんと?」
「なに、なんでそんなこと聞くの?」
にやにや笑ってる建人に余計に腹が立つ。
というか、なにがそんなにおかしい?
「領収書、出てないし。
自腹接待?
なにやってんの?」
「え?
もしかして史朗、俺が浮気してないかとか疑ってんの?」
いや、だとしてなんで、嬉しそうなんだ?
「ば、莫迦云うな」
「やっぱ史朗、可愛いー」
抱き付いてきた建人が鬱陶しい。
引っ剥がそうとしても離れない。
「もうちょっとしたら話せるからさ。
待ってて」
「は?なにそれ?」
むかつく。
ほんと。
建人のくせに僕に秘密、とか。
……だから。
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