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「……あ、あの……っ!服、服着ませんか?」
目のやり場に困り慌てる僕に、三人のイケメンがじっと見る。
「服?……いいけどぉ、ミルクは可愛いのじゃないとやだぁ」
アヒル座りをしたミルクは、細い腰を捩り首を傾け、上目遣いをしてみせる。
「オレ様に見合う服はあるんだろうな?」
相変わらず鋭い眼光のアオは、僕を威嚇する様に見下ろした。
「……まぁまぁ……
こんな姿になってしまったんだから、小太郎の服を借りるとしようか」
茶々丸の穏やかな提案に、アオがチッと舌打ちする。
小さなタンスを開け、服を幾つか出して見せる。
と、それを見たミルクが唇を尖らせた。
「……えー!、全っ然可愛くなーい!」
ミルクの背後から覗き込んだアオは、眉間に皺を刻ませた。
「貴様!このオレ様に、二度も恥をかかせる気か!?」
「……ご、ごめんなさい……っ、」
アオの気迫に圧された僕は、肩を竦め条件反射の様に謝る。
……そういえば、昨日の夜……
ずぶ濡れで苦しそうだったアオの体を拭いて
適当な服を着せたんだっけ……
服のセンスの欠片もなく地味な僕は、お洒落なお店に入った事なんてない。
持っている服は全部、おばちゃん御用達の激安店で購入したものだ。
「……ではこうしようか」
目を細め柔やかな顔をした茶々丸が、僕とアオとミルクを交互に見る。
「小太郎と一緒に服を買いに行ってくるから、二人は留守番していなさい」
その提案に、ミルクとアオがすぐにわーわーと反発する。
「……えぇー、ズルーい!」
「抜け駆けは許さんぞ、茶々丸!」
食ってかかる二人に、茶々丸は静かに僕の服をつまみ上げた。
「では、これを着てみなさい」
「……!」
「……!!」
それを見た二人の動きが、ピタッと止まる。その反応に、目を細めた茶々丸の口が綺麗な弧を描いた。
……凄いなぁ
よく解らないロゴとキャラクターが入ったTシャツに、安っぽい迷彩柄のハーフパンツ。
僕が着たら田舎丸出しなのに、茶々丸が着ると、何故か服まで格好良く見えてしまう。
やっぱりイケメンは、何を着てもイケメンなんだなぁ……
なんて感心しながら、買い物袋を手に
茶々丸とショッピングモール内を歩いていた。
ド田舎のこの町にファッションセンスの高い店舗があるとしたら、駅前にあるこの大型ショッピングモールひとつしかない。
たまに奇抜すぎるファッションをした人を見かけるけど……若い世代の殆どは、ここの専門店で売られている服を着ている。
茶々丸の頭にある猫耳と、尾てい骨から伸びる長い尻尾の先が、歩きながらゆらゆらと動く。
服は地味だけど、これだけで随分奇抜な気もしなくもない……
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