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第5話

「本当に、心臓止まったかと思った」 息を整えたコータに手を引かれて連れ込まれたトイレの個室で、博也は浴衣のままへなへなと蓋のない便座に座り込んだ。 発散できていない欲望は体の中で渦を巻いているが、他人に見られた衝撃でさすがに勃起は多少収まっている。 小さな劇場は防音が杜撰(ずさん)なようで、映画の音声がここまではっきりと届いていた。トイレの外を通る人がいても、会話を聞かれることはなさそうだ。 「オールナイトで日活(にっかつ)ロマンポルノかけてることもある箱だし、別に平気だろ」 言い返すコータはどこか不機嫌そうだ。 その場の勢いで男に手を出したことを後悔しているのだろうか。 だが、次の文句でそうではないと知れた。 「本当に声我慢し切った上に、一方的にいかされるなんて超凹むわー。モモさんとマノンのトイレでやってた時はすんごい声出してたのに」 がぁんと衝撃が走った。 正直、モモとマノンでしたことは何度かあった。営業後の店内はもちろん、営業中の従業員用のトイレでも。 だが……。 「う、嘘でしょ。ちゃんと声我慢……」 「してませんでしたー。『イイよぉ、中いっちゃうよぉ』って泣きながら喘いでましたー」 思い当たる節がないといえば嘘になる。 意識してはいなかったが、本当に声を我慢しなければいけないセックスを経験した今となっては、あの時はきっと声が外に聞こえてもいいと思っていたのだろう。 他にもモモの客が来ているのに自分を抱いてくれるのが嬉しくて、自慢したくて、余計に声を出していたとさえ言えるかもしれない。 それを聞いていたのが、モモの指名客ではなくてコータだったというわけだ。 浅ましい心は持つものじゃない。 「す、すみませんでした……」 今更ながら反省する博也に、コータは呆れた様子ではあったが、実は……、と話してくれもした。 色枕キングと呼ばれたモモが男客とも寝ているのか、後輩ホストの間で面白半分で話題になっていたそうだ。コータはそんな話にはあまり興味がなかったが、トイレの前でうっかり真っ最中の声を聞いてしまって、博也が気になり始めたということだった。 「それから店に来てる博也さん意識して見てたら、すげぇ色っぽいんだもん、参ったよ。いっつもモモさんのこと物欲しげに見ててさぁ。モモさんも店内で他の客には手ぇ出したりしないのに、博也さんとはトイレとかVIP席とか色んなとこでやってるし。千人斬りのモモさんがハマるなんてどんだけイイんだろって、男なら誰だって興味もつだろ」 褒められているのか貶されているのか微妙なところだったが、モモがマノンの店内では他の客に手を出していなかったという話は、正直に言って嬉しかった。 千人斬りのくだりには、さすがに博也もそこまでとは予測しておらず、目を白黒させてしまったが。 だがそれで、奔放なモモが 『ゴム、絶対!博也のためだから!』 とそこだけは頑なだった理由がわかって、むしろ嬉しいエピソードとして伝わった。 博也のためだと言いつつ、実際は後ろを使うセックスに嫌悪感があるのだろうと思っていたが(そしてそれは間違いなく衛生面では正しい判断なのだが)、どこかで貰ってしまったかもしれない病気を博也にうつさないための用心だったのだ。 やっぱりモモは根っこのところでは優しくて、彼なりに博也を大切に想ってくれる部分はあったのだと、改めて信じられた。 「ちょっと。モモさんの話になった途端そんな嬉しそうな顔されたら、俺の立場がないんですけど」 恨めしげなコータの表情に笑ってしまう。 モモを思い出して嬉しい気持ちになれるのは、もう潮時なのだと自覚させてくれたコータのおかげなのに。 「で、僕としてみたくなったと。そういう話?」 別に悪い気はしない。むしろ、どちらかと言うと嬉しい。 ノンケの若いイケメンにやりたいと思ってもらえるなんて、ゲイ冥利に尽きる。 どうやら、自分さえ開き直ってしまえば、思っていたよりこの世界は生きやすい場所のようだ。 だが、コータは渋面を作った。別に責めていないのに。 「最初はそういう興味だったのは事実だから、声を大にして否定はできないけどね。 でも、博也さんを目で追うようになったら、だんだんこの人すげぇ無理してんなってのとか見えてきてさ。なかなか席に着く機会なかったし、モモさんも客のプライベートペラペラ喋るタイプじゃなかったからはっきりとはわからなかったけど、精神的にも多分金銭的にもかなりキテるんだろうなってわかっちゃって。 でも、初めて席に着いたとき、あんたはヘルプの俺にまで気を遣いながらおどおど笑ってて。 あぁこりゃ駄目だ。俺が助けて、守ってやらないとって、そう思った」 この子は一体何を喋っているんだろう。どうして、こんなに優しい言葉をくれるのだろう。 込み上げてくる涙を、さすがに今日は泣きすぎだと思って必死に堪える。 照れているのか顔を背けていたコータは、涙の気配に気付くことなく肩をすくめた。 「まぁ結果的に、俺が慰められた上に一方的にいかされたわけだけど。しかもトイレで告白とか。俺マジで終わってるわー」 言いながら、コータは便座に腰掛けた博也の前にしゃがんだ。 狭い個室内は窮屈で、コータの両膝は便器ごと博也を挟むような形になってしまう。 「博也さんいけなかっただろ。ごめんな俺だけ」 さも当然のように浴衣の裾を開いて下半身を露出させられ、博也は固まった。 人は、こんなに簡単に性器を外気に晒すものだっただろうか。 「ちょっ!何!」 「何って、抜かないと辛いだろ?博也さんだって男なんだし。俺男相手は初めてだからうまくないだろうけど、大目に見てよ」 コータは言うなり博也の半勃ちを手に取り、躊躇いなく口を開いた。 「待って!いいって!いらない!結構です!」 博也はコータの口と自分の下腹部との間に手を挟み、必死で抵抗する。 そこまで頑張ってもらうのは、さすがに申し訳なさすぎる。第一、そんな努力をしてもらっても、後ろへの快感なしでは物足りない体になってしまった博也の熱は解消できず、切なさが募ってしまうだけだ。 だが、そんな事情がノンケのコータに汲み取れるはずがない。 「やっぱ、モモさんみたいによくなくてがっかりした?」 と暗い顔だ。 一方的にいかされたのは、よほど沽券にかかわる出来事だったのだろうか。 コータは大層落ち込んでいるように見えた。これで口まで使ってもらった挙句、博也が満足にいけなければ、傷に塩を塗りこんでしまうかもしれない。 博也は室内用スリッパに覆われて隠れた自分の足先を見やる。 傷に必要なのは塩ではなく、包み込んで癒してくれる「ばんそこ」だ。 博也はもうかけるだけの恥はかいたのだと己を鼓舞し、まだ性器を握ったままだったコータの右手に自分の両手を重ねた。 ――素直になろう。コータ君にはもう、何も隠す必要はないんだから。 「……じゃなくて、さっきは他のお客さんにばれちゃうって思ったから、コータくん早くいかせようって頑張っただけで、僕もき、気持ちよかったし。 でも本当は、その、ぉく、ね、その、コータくんのが届くのがやばくって、絶対声出ちゃうと思ったから、当たらないように気をつけてたんだよね……」 博也は小さくなってしまう声を搾り出す。 モモの前ではどんなはしたない言葉でも口にできたのに、どうして今はこの程度のことがこんなにも恥ずかしいのだろうか。 「ここ、口でしてくれるより、その……その……」 何もされていないのに、コータの手の中で自分の物がどんどん勢いよく育っていく。 もちろんそれはコータにもばればれで、促すようにきゅっと握られた。 「んっ」 気持ちいいけど、そこじゃなくて。 そこじゃ、なくて。 「その……お尻、の、奥……奥を、コータくんので……突いて、くれない……かな」 なんとか言い切った。 その瞬間、なぜこんなに恥ずかしいのか唐突にわかってしまった。 だって、コータにはお金を払っていない。対価を要求できる立場じゃない。 何の権利もないのに、コータにもう一度勃てて、自分のお尻の中を突いて気持ちよくしてほしいと頼んでいるのだ。 こんなに我儘で、恥ずかしいことが他にあるだろうか。 身を竦める博也とは対照的に、性器ははちきれんばかりに育っていた。 そして博也は確認する余裕もなかったのだが、しゃがみ込んだコータは博也の浴衣の裾を開いた時から既に、だぼついたズボンの股間を再びきつくしていたのだった。 「へぇ……もう一回言って?」 さっきまでの落ち込んだ表情はどこへやら、コータはもう、隠しきれない好色な笑みを浮かべていた。 右手でにぎにぎと博也に刺激を与えながら、自分のズボンのホックを外しにかかっている。 なんでこんなに恥ずかしい言葉をもう一回言わないといけないんだと思いながらも、やめて欲しくなくて、博也は従順に言葉を紡いだ。 「コータくんの、欲しい。欲しいよ……」 そしてコータが取り出した猛りの生々しい色と長さを目にした途端、博也の口から言葉が迸っていた。 「それ……!それでお尻の奥、突いて……!」 コータはもう焦らさず、博也の腕を掴んで立ち上がらせた。 そしてくるりと反転させ、背中を向けて腰を突き出させる。 がばっと浴衣の裾を捲り上げると、日に焼けていない真っ白な尻が露になった。 先ほどの性急な行為で溢れたのだろうローションが乾いてべとつき、ひどく生々しい。 蛍光灯に煌々と照らされたその尻は女性のような丸みには乏しいが、男に劣情を抱かせる、欲をぶつけられることを知る佇まいだった。 それが今、便器の上で犯してくれと従順に差し出されている。 コータの雄は、目の前の光景に暴力的な欲望を掻き立てられた。その切っ先が、過たず博也の綻びにあてがわれる。 「あっ!待って!ゴムが……」 言い終わらない内に、ずっぷりと突き込まれた。 「あああぁぁー!」 色めいた悲鳴が長く響く。 既に奥まで開かれ、十分に柔らかくなっていた博也の中は、驚くほどすんなりとコータの長さを全て受け入れてしまっていた。 「くっ……やっ……ぱマジすげぇっ。ナマだと余計くる……」 自分の敏感な部分を一息に濡れそぼる場所に埋め込んだコータが、満足げにぶるりと震える。 博也は初めて感じるラテックス越しではない熱さに、信じられないと頭を振りながらも、 「あぁ……」 と感じ入った溜息を漏らしていた。 「俺、病気もってないし、博也さんがどうしてもって言うなら次からちゃんとつけるよ。でも、今日だけ、今日だけはあんたのこと直接感じて、自分のものにしたいんだ。頼むよ……」 懇願するように言われて、直接触れる熱に陶然となっている博也に跳ね除けられるはずがなかった。 何より、コータは次からと言った。 次も、またあるのだ。また抱いてくれる。博也は、一人にならないのだ。 「……かった、わかった、から、もう、お願い、動いて……」 奥まで満たされた圧迫感に、切れ切れの吐息混じりに懇願する。 コータの先端は、博也の酷く感じる場所にしっかりと届いていた。 「膝壊しそう。ちょっと協力して」 軽く後ろを見遣ると、背の高いコータが無理な体勢で腰を落としているのが見えた。博也は便座に両手をつき、できる限り爪先立って腰を高く持ち上げる。 さっき劇場内で筋力をほとんど使い果たしたせいで、博也の両足はすぐにぶるぶると震えだした。 「一応言っておくけど、ここも誰が入ってくるかわからないからね。声は小さめに調整したやつ聞かせて」 そんな無茶なと思っている間に、コータが博也の腰を掴み、斜め上に突き上げた。 「ああっ」 奥に、当たっている。 博也の上げた声は、明らかに待ち侘びた刺激を悦ぶ艶に彩られていた。 コータが腰を引き、もう一度奥を狙う。 同時に両手を使って博也の腰を前後に動かした。 出入りするストロークを余計に深くする動きに、擦られる内壁が歓喜の声を上げて熱い肉棒に纏わりつく。 ギリギリまで抜いて、根元まで納める一往復が、これまで経験したことの無い長さで、博也は唇を噛み締めて頭を打ち振った。 ――あぁ、すごいぃ……。 しかも、敏感な場所を長く擦り上げられた挙句に一番奥を突かれるのは、信じられないほど気持ちがよかった。 「あうぅんっ」 奥に当てられると、博也の口からどうしようもなく声が漏れてしまう。 我慢できそうな気配すらなかった。 腸の壁に男の性器の先端をぶつけられ、腹の中の臓器を押し上げられるのが、どうしてこんなにも気持ちがいいのか。 呆然と、博也はその快感と、自分の口から飛び出した嬌声を自覚した。 その時、劇場内のスピーカーから、どぉんと、打ち上げ花火のような、和太鼓のような音が漏れ聞こえた。 博也は瞼の裏に幻のしだれ柳の火花を写しながら、待ち侘びた刺激を与えてくれる熱い棒を、歓喜と共に食い締めた。 一方のコータは、博也が奥の壁でこれまで知らなかった快感に打ち震えていることなど知らず、勃起全体でじっくり味わおうとするように、ゆっくりと注挿を楽しんでいた。 「すっげぇ眺め。ここ、こんな風にまん丸に広がるんだな。俺のが根元まで全部入るし、柔らかいのにきっついし、ほんと最高」 言葉ほどには余裕のない声音で言いながら、コータは休まず腰を使った。 博也の足はもう限界で、ぶるぶる震えてほとんど力が入っていない。腰を掴んだコータの両手と、突き込まれた剛直で空中に縫い留められているようなものだった。 コータにされるがまま、コータのリズムで、気持ちいい場所を抜き挿しされる。 飢え切った博也が、こんな強い刺激に耐えられるはずがなかった。 「コータくん、きもちいっ、きもちいいっ」 押し殺しきれず、素直な快感を伝える言葉が口を突く。 声量はできる限り押さえてはいたが、それがかえって卑猥だった。 「嘘。こんなんじゃ足りないだろ?ほら、もっかいさっきの言って」 びっくりするほど優しいくせに、こんな時だけコータは意地が悪い。 足りないはずなんてないのに。もうすぐにでもいけそうなのに。 「さ、さっきのって?」 本当にわからなくて振り返ろうとするが、両手を便座についた不自由な格好では果たせない。 コータはずっと包まれていたい誘惑を振り切り、切っ先が抜け出てしまう寸前まで腰を引いた。 「ほら、俺のでどうして欲しいんだっけ?」 博也の訴えがよほど気に入ったらしい。博也は思春期の頃から男に抱かれる側ばかり想像していたから、なぜそこまでこの言葉に執着されるのかわからない。 けれど、それがコータを喜ばせ、自分をとてつもなく気持ちよくしてくれる魔法の呪文なのだということだけは理解できた。 「つ……『突いてっ。奥突いてっ』」 搾り出すように訴える。 抜け落ちる寸前まで引かれ、博也の内に残されていたコータの丸い先端が、びくりと跳ねたのがわかった。 「っ、……しょうがねぇ、なっ!」 うっかり出そうになったのを堪え、コータは応えてやるという体で博也の腰を引き寄せ、一気に根本まで突き込んだ。 どんっ と奥に叩きつけられ、博也のペニスからびゅっと濃い粘液が押し出される。 「あああああっ!」 快感と衝撃に声を迸らせ、博也の膝ががくりと折れた。 だが崩れ落ちるのを許さず、コータは腰を掴んで支え、先ほどまでとは打って変わった激しさで奥だけを狙って攻め立てる。 「いやぁっ やあぁっ あああっ」 立て続けに奥を突かれ、博也の口から悲鳴が迸る。 激しい突きに、半勃ちのまま白濁を吹き零す博也の性器はぶるんぶるんと揺さぶられ、粘液が糸を引いて便座にもタンクにも飛び散った。 「ほらっ ここっ 好きだろっ」 突き上げる毎に途切れるコータの声に、博也の悲鳴が重なる。 「ああっ ああっ やだあっ」 腹の中から強制的に射精させられ続けているような絶頂感に、博也は泣きじゃくった。 「やだあっ いってるっ おくっ いってるぅっ」 もう声を抑えることなど博也の頭からはすっかり抜け落ち、突かれるごとに声を限りに絶頂を訴える。 体を前後に揺さぶられ、腰を打ち付けられて、肉がぶつかるパンッパンッという高い音が個室内に響く。 深く叩きつける度に、内側にめり込みそうなほど釣りあがったコータの玉が博也の会陰に当たり、否応無く二人の絶頂感を高めた。 「あああっ いってるっ いくっ いくうぅぅっ!」 先に大きな波に呑まれたのは博也だった。たらたらと垂れ流していた白濁が量を増し、どぷりと溢れる。 だが半勃ちの性器の形状にはほとんど変化はない。 中を責められる快感が、博也を射精に頼らない絶頂へと導いたのだった。 背後から犯すコータには、自分が博也を特別な絶頂に導いた自覚はない。がくがくと大きく痙攣する博也の腰を掴み、逃げを許さずに突き続ける。 「博也さんっ 博也さんっ あぁっ くそっ 出そうっ」 心臓が爆発しそうにドンドンと鳴り、倒れ伏したいのを堪えて、コータは奥を突き続けた。痙攣する肉の筒に絡みつかれ、気持ちがよすぎて動くのが辛い。 突き込むたびに、「あぁっ あぁっ」とコータの口からも思わず声が漏れた。 これまでの人生で、セックスの最中に声を出して喘いだことなどなかった。だが、声を堪えきれないほど全力を尽くし、押し寄せる絶頂に抗った。 博也はもう息も絶え絶えになりながら、 「いってぇ もぉ いってぇ 死ぬぅ」 と懇願している。 だがその合間に、 「いいよぉ またいくぅ」 とうわ言のように繰り返してもいた。 こうなると、博也は何度でもいき続けるということを、コータはまだ知らない。ここからが、すごいのだ。 だが、その秘密は今回は守られそうだった。 いよいよ堪えきれなくなったコータは、せめて最後まで博也のイイ場所を突いてやろうと残った力を総動員し、射精の瞬間まで腰を打ちつけ続ける。 「あぁっ クソっ だめだっ 奥出すよっ!」 博也の奥の壁に先端をめりこませ、我慢に我慢を重ねた奔流を遂に解き放つ。 ぱっと、コータの網膜に金色の光が躍った。体の中から力という力が飛び出したかと思う勢いで白濁が迸る。 コータは背を逸らし、腰をできる限り突き出して奥に射精を叩きつける。 まるで、自分のものだと刻みつけるかのように。 ぶじゅうううぅっっと自分の腰の奥の奥で音が鳴ったのを、博也は確かに聞いた。 「ひううぅぅー!」 それは、行き止まりの壁に噴出された大量の粘液が、行き場を失って襞の溝という溝に逃れ、逆流する音だった。 熱い粘液が一気に充満し、博也の中が完全に占領されてしまう。 初めての強烈な種付けに、博也は身も心も完全に蹂躙された。 「……しゅごっ……あつ、ぃ……にこれ……もち、いぃ……」 男の肉棒と精液に満たされた己の穴を収縮させ、博也は涎を垂らしながら中の感触を全力で追った。 モモとのセックスとはまた違った種類の絶頂に、頭がふわふわとして幸せを噛み締める。 ――コータ君のおちんちん、好き……。もっと突いて……。 しかし、博也の筋力は自分自身の底なしの欲望にはついていけないようだった。 意識はあるのに力が抜け、危うく便器の中に頭を突っ込みそうになってしまう。 それを、我に返ったコータが慌てて支えた。 「っマジで、なんなのあんた、エロすぎんだろ。 ……もう二度と、他のヤツとやらせねぇからな」

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