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Ⅱ マジで恋するお兄様④
「綺麗に整理整頓されてるじゃないか」
「え……あ、うん。そうだね」
チロリ、と。
宵闇色の視線が、俺を睨んだ気がしたけど……気のせいだな。
「実家で私と一緒のベッドで寝ていた時は、お前がいつも部屋を散らかして、私が片付けていたのにな」
「一人暮らしして、自覚が生まれたのかな?ハハハ」
「そうだと嬉しいな。お前の成長は、私の喜びだよ」
チロリ
視線が部屋中を、舐め回すように蠢いた。
「……一人暮らしにしては、ほんとうに片付いている」
「でしょ」
「一人暮らしだからねぇ」
「うん」
「誰かに片付けてもらってる……なんて事はできないのにねぇ」
ドキッ
「そそ、そんな事できないよ」
ドキドキ
「嫌だなぁ、お兄様。俺が誰かと同棲してる筈ないじゃないかー。ハハハ」
「………同棲?」
「どどどっ、同棲するわわっ、訳ないって話してるんだよ!」
「………そうだったね。郁巳は一人暮らしをしてるんだったねぇ」
「そうだよ。アハハハハー」
「そうだったねぇ。ハハハハハ」
……よしっ!
上手く誤魔化せた。
確かスーパーの早朝特売に出掛けるって、昨夜言ってたな。
いいタイミングで助かったぞ。
しばらく帰って来るなー!
「じゃあ、郁巳。ベッドに寝ようか」
「えっ」
「剃毛の約束だったよね」
う~
一度言い出したら、絶対引き下がらないお兄様だ。
俺が折れるしかない……
お兄様の手にうながされて、ベッドに寝転んで仰向けになった。
「楽にしてるんだよ。痛くないからね」
むぅー
今日ほど、見慣れた天井が切なく感じた事はない。
「お返事は?郁巳」
「……はーい」
「手は上に挙げようか。はい、バンザーイ」
「……バンザーイ」
「ジッパーを下ろすよ。……腰を少し上げて……ズボンを引き抜くからね」
「……はーい」
なんなんだ。
この不毛な会話は……
俺、ベッドで両手を頭の上でバンザイして、実の兄にズボン脱がされている♠
健全な大学生が~
なんて不健全な朝なんだァーッ
「郁巳は、ボクサーパンツなんて物をはいてるんだね」
うっ……
「こ、これは」
「ダメだよ。こんなチャラい物はいちゃ」
チャラくない!
ボクサーパンツは、年頃の男子がはく健全なおパンツだ!
お兄様のブーメランの方が~~
「私は、自分の股ぐらに似合う物しかはかないよ」
美意識、高っ↑↑↑
「お前に似合うのは、ブーメランでもボクサーパンツでもない」
フフ……
ギャーッ、お兄様!
顔の筋肉崩壊してるっ。元はいい顔なんだから。顔の筋トレしてっ!
ムフフ~……
怖いっ
怖いよ、お兄様。
「郁巳。お前に似合うのは、白ブリーフだよ!」
バーン★
ウギャアァァァーッ!!
ちゃんと持ってきてるーっ
わざと、リビングに置き忘れておいたのにぃ~
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