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Ⅲ いま、吹き荒れる嵐!⑥
「……というのが、嘘偽りなき真相であります。はい」
「なるほど。彼らは、人間ではないというのか」
「俺がつくった人型ロボット《ヘルツ》です」
「『心』という意味か……実によくできているね。本物の人間のようだ」
「大学のロボ研……ロボット研究サークルで製作しました」
向かって右側
「碧眼がヘンゼル」
にっこり♪
左側
「灰銀の目がグレーテル」
にこにこ♪
「俺が二人を名づけました」
「市場にも、ここまで精巧な人型ロボットは流通していない。
さすがは、私の弟だ。私も昔はエンジニアだったから、情熱も苦労もやり甲斐も分かるよ。よく頑張ったね」
褒めてくれているが、目が笑っていない。
「それで……」
宵闇を潜めた玲瓏を、つぅ……っとすがめた。
「《ヘルツ》をつくった目的は?」
「家事が苦手なので、家の掃除や、朝昼晩の食事の用意をしてもらえたら……と」
「なぜ二体、双子をつくったんだ?」
「俺が実家に帰省した時とか、一人ぼっちは寂しいかな……って」
「……ここまでの話は理解した」
ほっ
「では、最後の質問だ」
ドキン、ドキン
「家事を手伝うのが目的なのに、どうして性器が付いてるんだ?」
お前達が裸になるから、しっかり目視されてるじゃないかーッ
股の間で、こんもりしている突起物がー!!
「人間そのものにしたくてっ」
「家事目的なら性器は必要ない。今すぐ取るんだよ!」
「そんなっ、いくらなんでも可哀想!」
ヘンゼルとグレーテルが肩を寄せ合って、ガクガク、ブルブル震えている。
アソコ取られるって聞いたら、そうなるよな。
……お前達も、お兄様の恐ろしさを身を持って知っただろう。
「質問を変えよう。二人はどうして、巨根なんだ?」
「そ、それは~」
「人間に近づけたいだけなら、普通サイズでも小さくてもいい筈だよね」
「え、えぇっと~」
「取るのは可哀想だから、取り換えようか」
「なにに?」
「巨根をSサイズにだよ!」
「それも可哀想すぎるっ!」
今まで慣れ親しんだモノが、ある日突然、小さくこじんまりするなんてッ
男として、ショックだ……
立ち直れない……
「脚の間にキュウリやモンキーバナナがぶら下がるより、よっぽどいいじゃないか」
ププッ
……笑っちゃダメだ。
……けど、ヘンゼルの股間にキュウリ。
グレーテルの股間にモンキーバナナがぶら下がってるの想像したら、プププ、笑えてしまう。
やっぱり、何日間かに1回は取り換えるのかな?
そうすると朝食はバナナで、昼は冷やし中華だな。
……ぶら下がってた物、食べるのかっ?
食べ物は粗末にしちゃいけない!
バチが当たるから、大事にしないとな。
じぃぃー
うぅ、二人がじと目でこっちを睨んでる。
真面目な顔、真面目な顔……
「取るのも嫌。取り換えるのもダメ。
妥協案を模索しているのに、ことごとく突っぱねられては平行線だね」
うぅぅー、だってー
「私は心配なんだ。お前が巨根好きだからね」
「きょきょきょーッ」
俺は、きょーッ
「きょこ」
「巨根好きだよ、お前は」
「違います!」
「違わない」
違うっつったら、ちがーう。
全力で否定するぞ!
不意に。
藍を溶かした瞳の闇が、俺の像を包んでいた。
「お前は、お兄様が大好きだね」
「……はい。大好きです」
「私が大好きだという事は、股ぐらに生えているお兄様のちんこも大好きだよね?」
うっ
「……お兄様のおちんこ、大好きです」
「ならば、証明できたんじゃないかな?」
*** *** ***
郁巳はお兄様が大好き…①
お兄様が大好きなので、お兄様のちんこも大好き…②
お兄様が巨根であるのは明白である…③
① ② ③より、
郁巳はお兄様の巨根が大好きである。
∴郁巳≡巨根好き
(従って、郁巳は巨根好きと合同である)
*** *** ***
「俺は、巨根好きです」
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