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Ⅳ 風呂はジェットコースター⑧
「ヘンゼル!」
グレーテルがヘンゼルの頬を叩くが、ピクリともしない。
仰向けに寝かせたヘンゼルの左胸に、俺は耳を当てた。
………トクッ、トクッ、トクッ
良かった。
心臓が動いている。
思考機能が一時停止しただけだ。
いわゆる気絶のようなもので、時間がたてば回復する筈だが……
……『眠り姫 は王子様のキスで目醒めました』
えっ……
……『眠り姫をキスで起こしてください。プリンセス』
おい。王子様のキスで目醒めるんだろ?
プリンセスって、どういう事だ?
……『俺に、愛の口づけを!プリンセス』
この声~………
喋っている。
胸元に耳を当てた俺だけに、聞こえる声で……
ヘンゼル!!
「どくんだよ!」
天から降ってきた声に反応する前に、俺の体が抱えられた。
ブァッシャアァァーッ
「ヒギャーッ!」
「ギギャーッ!」
晴天の霹靂 。一極集中、ゲリラ豪雨に、悲鳴を上げたヘンゼルが飛び跳ねる。
巻き添えのグレーテルも同時に、二人一緒に飛び跳ねる。
「思考機能が停止したら、こうやって冷やせばいいんだよ。私は元エンジニアだ。取り扱いくらいわきまえているよ」
……荒療治すぎる。
「お兄…様」
冷水シャワーでヘンゼルとグレーテルを追い詰めるお兄様……楽しそうだ。
「どうして、寝た振りしてたって……分かったんですか?」
俺だって騙されたのに。
今日が初対面のお兄様に、なぜヘンゼルのうそ寝が分かったんだろう?
「簡単だよ」
「ヒィギャアァァーッ!」
「特にココも冷やそうね!」
ズシャアアァァァーッ
ジェットに切り替えたシャワーが狙い撃つのは、ヘンゼルのアソコ……だ★
「思考機能が停止してもギンギンに勃っているブツは、ちゃんと冷やした方がいいよ!」
えェェェーッ!!
気づかなかった……俺……
ギンギン★フル勃起のヘンゼルの心音、聞いてたんだ……
バスルーム内を、股間を押さえたヘンゼルが逃げまわる。
ヘンゼル……おっきいから、隠しても段差のついた立派なカリが出ている。
「ごめんなさーい。もうしませんっ。なので、雄のシンボルだけはーっ」
「安心したまえ。壊れたら、取り換えてあげるよ。Sサイズに」
「嫌ァァーッ」
「嫌なのか?じゃあ、キュウリにしようかなァッ!」
「やめてーッ」
「ワァッ、来るな!こっち来るなッ、ヘンゼル。俺まで巻き添えにッ」
「ヒギャーッ!」
「ギギャーッ!」
楽しそうだ……
お兄様……
ヘンゼルとグレーテルも……
ププッ
「……笑ってるけど、次はお前の番だよ。郁巳」
………………お兄様?
「私が傍にいながら、私に助けを求めず、あいつらに金玉を触らせた罪は重いよ」
ゾクリ
背筋に冷たいものが走った。
「だって、そうだろう。お前の玉袋は、私専用ミルク貯蔵庫だ」
「俺の金玉は……」
「私の金玉だよ」
ゾゾゾッ
宵闇の玲瓏に魅せられた体が硬直した。
根元に布を巻かれた熱脈が、ビュクビュクしている。
俺も……
ヘンゼルみたいに、アソコに……
冷水シャワー浴びせられちゃうの?
「………まさか」
瞳の深淵が笑った。
「もっとステキなコトだよ。郁巳……」
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