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Ⅵ この手をずっと握ろう①
「うそっ!マジで一条来たの?お前、本物?」
そりゃ、そうだよなー。
俺が文化祭に来るなんて、夢にも思わないよなー。
「う、うん。俺にも手伝える事ないかなって」
「一条、この暑さでやられたか?」
「アハハー」
……暑いから家にいて、そのまま夏休みに突入したかったんだ。
……なんて。お兄様のいる前じゃ言えない。
「そうだな~。ロボットブースの案内は足りてるし。かといって……」
「なに?森野 先輩」
「一条じゃクレープ焼けないもんな」
グサッ
家事全般、苦手。
家庭科的な事、できない。
だから、ヘンゼルとグレーテルをつくったんだ!
ロボ研は、クラブハウスでロボットの展示。屋外テントで、クレープ屋を出店している。
……クレープじゃ、俺が手伝える事はないみたい。
「せんぱーい、俺達やる!」
「やるやる!」
「おっ、ヘンゼルとグレーテル。久し振り!」
「森野先輩も久し振り!」
「久し振り!」
「おぅ。……あ、こちらは?」
「申し遅れました。私は郁巳の兄で、一条 尊斗です」
「ロボット研究会 主任補佐の森野 優也 です。一条君には、いつも助けてもらっています」
「こちらこそ、郁巳がお世話になっています。なにか弟にできる事はないでしょうか」
うわー。お兄様、カッコいい。
できる兄って感じで、喋り方がスマートだ。
……実際できる兄なんだけど、普段が…ね。
「郁巳」
「はいぃ~」
「先輩が、お前に頼みたい事があるそうだよ」
「はいー」
「一条、売り子さんやってくれるか?クレープは、ヘンゼルとグレーテルに頼んでいいか」
「うぃっす」
「俺達に任せろ」
「すまんが俺達、休憩に入るわ。俺は裏にいるから、なにかあったら呼んでくれ」
「ありがとう。お疲れ様」
「こっちこそ、ありがとな。一条」
「ところで先輩~」
「売り子なんだけど~」
どうした?ヘンゼル、グレーテル?
ムフフ~
ウフフ~
「やっぱりメイド服?」
「ないわーッ」
「一着サンプルがあるぞ。メイドカフェにしようっていう案が最初に上がったからな」
「あるんかーッ」
「先輩、そのメイド服借りていいですか?」
「イクミに着せたーい!」
「おぅ、いいぞ」
「着やんわーッ!」
「そうだよ、君達。この猛暑でメイド服なんか着たら、郁巳が熱中症で倒れてしまう」
お兄様っ。やっぱり、頼りになる。
持つべきものは、お兄様だ。
「使うのはエプロンだけにしてもらおうか」
そうだな。売り子なんだし、途中参加だし。余ってるエプロンは、メイド服のしかないよな。
エプロンくらいは付けないと。
「お前が熱中症になったら大変だ」
「お兄様、ありがとう。俺を、こんなにも心配してくれて」
「当然だ。服は全部、脱ぐんだよ」
………………え。
「なんで?」
「裸エプロンに着衣は必要ないよー!!」
お兄様ァァァァーッ♠
「イク、おパンツも脱ぐの?」
「イクミ、すっぽんぽん?」
「裸エプロンはノーパンが基本だ。ヒラヒラレースとノーパンは、裸エプロンの命だよ♥」
「お兄様っ」
「……イク」
「……イクミ……せーの♪」
「「白ブリーフ卒業 おめでとう!!」」
「……一条、まだ白ブリーフはいてたのか」
「森野せんぱ~い💦」
ヘンゼル~~💢!グレーテル~~💢!
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