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Ⅶ 架け橋①
「わ、ほんとだ。立派なヘチマのタワシだ」
「グレーテル!どこから、わいて出てきたァッ」
ヘンゼルのズボンの中身をのぞき込んでいるのは、グレーテルだ。
「立派なヘチマのタワシ♪ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよん……だよ」
「ギャ♠」
勝手にグレーテルに外されたベルトのバックルを、中身の確認もせず直す勇気もなく……神妙な面持ちで、下着の中を上からのぞき込む。
股間に、ヘチマのタワシが………………
「ない」
慣れ親しんだ、いつものムスコだ。
「付けてほしいなら、今から付けてやるぞ」
プルプルプルプル~
「遠慮しなくていいのに。ヘチマのタワシ♪」
「だったら、グレーテル。お前が付けてもらえーッ!ヘチマのタワシ♠」
「……いいね!双子で、おそろのヘチマのタワシだ!」
……!!
……♠♠
プルプルプルプル~
ブルブルブルブル~
「郁巳が喜ぶよ!郁巳の天使の笑顔のためなら、私は悪魔にだってなれるんだ!」
「ミコトさんは悪魔じゃないです」
「魔王です」
「なにか言ったかな?そこの二人」
プルプルプルプル~
ブルブルブルブル~
「そうかい。じゃあ、郁巳のためにヘチマのタワシを取り付けようか!」
「嫌ァァァーッ」
「やめてェェェーッ」
「………ん、ん、ぁああ~」
パーテーションの向こうで、声が聞こえた。
「寝言……か」
太陽は稜線に傾き、陽だまりが影の淵に沈んでいく。
「疲れているからな……もう少し眠らせてやりたいが……」
もうすぐ、陽が落ちる。
「そろそろ時間か……」
パーテーションの中、ベッドの端に腰を下ろした。
「起こすのがもったいない寝顔だ」
「ほんとに……頑張ったな、イクミ」
「ありがとうな、イク」
寝入っている頬に、尊斗がそっと手を当てた。
「……ところで。ミコトさん、元エンジニアって事は、今はなんのお仕事されてるんですか?」
「私かい?それはね………」
「………お兄様ぁ~………ヘンゼル~……グレーテルぅ………」
「私達を呼んでいるよ」
ベッドサイドは、ヘンゼルが右側。グレーテルが左側に、それぞれかしずいた。
上から尊斗が組み敷いて、スプリングが弾んだ。
おはよう。
……イク
……イクミ
……郁巳
チュッ♥
チュッ♥
チュッ♥
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