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Ⅵ タワシ
雨の上がった音色を、沈む夕陽に寄り添う星が奏でていた。
「ミコトさん、ありがとうございます。俺、イクにふさわしい男になるように……」
「君はなにか、勘違いをしていないか?」
ゾワゾワゾワゾワ~ッ
背筋に悪寒が這い上る。
「私は郁巳に近寄る者をことごとく排除する。もちろん、君も例外ではない」
「……………………え゛」
宵闇の水底が、朱の斜陽を飲み干して蠢いた。
「だって、そうだろう?郁巳を世界で一番幸せにできるのは、世界で唯一人、この私しかいないのだから」
「えェェェェェ~ッ!!」
「異論があるかい?」
「ミコトさんの仰る通りです!」
「郁巳を幸せにするのは、私だよ」
「御意!」
「しかし……」
口角が微かに上がった。
ヘンゼルから見えない角度で……
「私が毎日、傍にいられない分の埋め合わせくらいは、君達に任せてもいいと思っている」
声は届かない。
ふわりと舞った白いカーテンの中に消えていった。
「ミコトさん?……なにか言いましたか」
「思い出した事があってね。すまないな。君の処置についてだ」
「あと数分で機能停止するとか~」
「もっと根幹に関わる重大なトラブルだ」
それはね………
「取り換えた君の股間のキュウリなんだが……」
「俺のナニ、キュウリになったんですかァァァーッ!!」
「生憎、新鮮なキュウリがなくてね。ヘチマにしたよ」
「俺の股間に、ヘチマが生えてるんですかッ!!」
「新鮮なヘチマもなかったから、タワシにした。ヘチマのタワシだ。
これからは、君のヘチマのタワシで、郁巳を洗ってやってくれ」
「ムスコがヘチマァァァァ~~♠♠♠」
それも、タワシ♠
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