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Ⅸ いつまでも、これからも…… 【完】
光が降ってきた。
投影が替わった夜空
優しく撫でる腕になだめられて、お兄様の肩に体を預けて見上げた空から……
光が押し寄せた。
何十……何百もの、光が夜空を駆け巡る。
静かに……静かに……
星の奏でる鼓動だけを聞いて……
頭の下に差し込まれた手が、髪を撫でた。
「ペルセウス座流星群」
耳元をくすぐる声が口づける。
「8月のちょうど今の時期に極大期を迎える」
天球を星が駆けた。
一つ、また一つ……
光が帯になって、無数の星が頭上を流れる。
「願うんだよ。流れ星の数だけ、願いを」
宵闇色の瞳に、流星が輝く。
「お前の願いは全部叶えてあげるよ」
贅沢すぎる。
頭上の空を行き交う流星の数だけ、願いが叶うなんて。
「お前が、私の願いを叶えてくれ」
「お兄様の願いを、俺が?……」
「そうだよ。私の願いは……」
額に、流れ星の光よりも優しいキスが降った。
「お前の願いを叶える事だよ」
聞こえるよ。
星の奏でる声
降り注ぐ流星が幸せを願っている。
星の瞬きは、お兄様の声なんだ。
お兄様が俺の幸せを願ってくれている。
「……イク、大好きだ」
「……イクミ、大好きだぞ」
流れ星と一緒に、舞い降りた声
ヘンゼルの掌が頬を包んで、グレーテルの右手が俺の左手を握った。
「「誕生日、おめでとう」」
チュッ♥
チュッ♥
額と頬に口づけが降りる。
ヘンゼル
グレーテル
「大好きだよ」
これからも、ずっと一緒にいたいな。
………チュッ♥
舌先をくすぐる口づけが舞い降りた。
影に天球は隠れて、流星が見えなくなった。
でも、いいんだ。
宵闇に流れた星の瞬きを見たから……
そっと、瞼を閉じる………
唇と唇が触れて、大きな掌が髪を撫でた。
俺は右手で温もりを抱きしめる。
大好きなお兄様の温もり……
熱い抱擁で、口づけが深くなる。
お兄様の温もりに閉じ込められている……
「生まれてきてくれて、ありがとう。郁巳……」
―完―
これからも、ずっと、ずうーっと、皆の頭上に幸せの星が降り注ぎますように☆彡
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