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第4話
宿までの道が遠い。
ガタガタする不安定な石畳と、慣れない下駄が、余計にナカにある玩具を動かして、身体が熱くなるほどに内部を擦る。
ナカに入っている広瀬の精液のせいで、ぬちゃ、ぐちゃと、滑りながら僅かに精液がこぼれ落ち、太股に垂れ始めているのが感覚で解った。
「か……ず、み……っ……はぁ、はっ……」
「気持ち良くなっちゃったの?」
意識が朦朧としながらも、広瀬に手をひかれ、何とか一歩一歩歩くが、一向に着く気がしない。
「ほら、頑張って。……着いたら、ご褒美あげるよ」
「ふっ……んっ……」
指先を握る広瀬の手の熱さに、俺は胸がざわつきながら、ゆっくりと引かれるままに歩いていった。
ようやく帰った宿では、酒を飲んだせいか、すでに広瀬の両親は寝静まっていて、俺は広瀬に引っ張られるままに、部屋に敷かれた布団の上に突き飛ばされた。
「っ、あ」
思わず声をあげながら転がる俺に、広瀬がシュル、と、浴衣の帯を解いて、俺の浴衣をはだけさせた。
乳首を摘まんだ玩具のせいで、乳首は赤く腫れ上がって震え、後ろの穴にくわえこんだ棒が、卑猥に穴から精液をこぼしながら突き出て、くわえて俺の性器はすっかり勃ちあがっている。
「凄いことになってるね」
「っ……ん、和己……抜いて、これ、取ってっ……!」
「悦さそうじゃない」
「んっ、ヤダっ……」
広瀬は俺の声に、肩を竦めながら、穴に突き刺さった棒をぐり、と捻りあげた。
「ひ、あぁ! や!」
「気に入った?」
ぶんぶんと首を振って、嫌だと訴え、広瀬の肩にしがみつく。
「や、やら、かずみぃっ!」
「ん、じゃ、こっちして」
広瀬がそう言いながら、俺の頭を掴んで、顔に広瀬の性器を押し付けた。
俺は無意識に、広瀬の性器を掴むと、口の中に含んで、ちゅぷ、じゅぷっ、と舌で愛撫を始める。
広瀬の性器もすでに硬く張りつめており、俺がくわえると直ぐに先端から白濁をこぼした。
「ん、ふっ……ん」
夢中で吸ったり、舐めたりをする俺の髪を掴んで、広瀬が喉の奥に性器を突っ込む。
苦しさにもがくが、広瀬はグイグイと性器を押し込んで、俺の口内を乱暴に犯した。
「ん、ぐぅっ……!」
俺の悲鳴に、広瀬が楽しそうに笑う。
「今度はこっちで飲んでね」
そう言いながら、広瀬は俺の喉の奥に、精液を放った。
喉奥で弾けた精液に、むせかえって咳をする俺に、広瀬は息を吐きながら、俺を見下ろした。
「良い眺め。……後ろ向いて」
「その、前にっ……これっ……」
外せと訴える俺に、広瀬は冷ややかな視線を送る。
「後ろ、向いて」
「っ……はい……」
思わず返事して頷き、俺は広瀬に背を向けた。
経験法則的に、俺はもう知っている。
だから、無意識に、両手を揃えて、広瀬に付きだした。
そんな俺の手を取って、広瀬がぐい、と腕を何かでキツく縛りあげた。
質感から、手拭いだろうと察しながら、俺はされるままに両手を縛るのを黙って待っている。
滑稽なようで。
俺と広瀬には、まるで大切な儀式のように、静かで、緊張感のある時間。
広瀬は満足そうに息を吐くと、俺をそのまま布団に押し倒した。
腕が拘束されているせいで、顎を打って、ガチッと歯が鳴り響く。
「いっ……」
痛みを訴えようとする俺に、広瀬はお構いなしに、つき出すような形になった尻から、棒状のオモチャを一気に引き抜いた。
「いぁっ! ……んっ!」
オモチャは内部をゴリゴリと、引っ掻きながら抜けていき、同時に広瀬が放った精液を掻き出すように吐き出させる。
自分でも、オモチャのせいで穴が開いて、ひくひくと震えている感触が解った。
「ひ、ぁ…んっ……」
びくびく身体を震わせながら、俺は広瀬を布団に頬を付けたまま、身を捩って窺う。
広瀬は俺の尻に手をかけると、性器の先端を穴に押し付けた。
「ご褒美あげるね」
「ひろ、せ……」
広瀬の性器が、穴を押し広げながら、ぬぷっと身体のナカに入り込む。
熱い塊に、引き裂かれるように侵入され、身体が知らずにビクンと跳ね上がった。
広瀬にナカを犯される感覚。
静かで、薄暗い部屋で、身を縛り付けられる背徳感。
すべてがまぜこぜになって、世界で二人しか居なくなってしまったように、退廃的な感情が、よりいっそう広瀬への執着を思い起こさせる。
「かず、みっ……」
唾液と共に熱の塊みたいな息を吐き出して、広瀬の名を呼べば、広瀬は答えるように、内部を擦り始めた。
目眩がするような挿入の感覚と、甘美な快楽に、堕ちてしまいそうな、すでに堕ちているような気分になる。
縛られているのは、確かに俺で。
でも、縛り付けられているのは、もしかしたら広瀬で。
俺たちはこの行為で、愛を確かめあって、気持ちを重ねている。
歪で。
貪欲な。
拙い、愛情表現。
「う、ん……ふ、はっ……」
ナカを突き上げられる度に溢れる嗚咽が、薄暗い室内に響く。
ずちゅ、ぐちゅっと、濡れた音に混ざりあって、耳の中を犯していく。
「うっ、あ、あっ……! かず、かずみっ……ん……はぁっ……!」
「っ……学……」
広瀬が、小さく名を呼んだ。
その声に、心臓が跳ねあがって、全身が震えて。
もっと、もっと。
「かず、みっ……好き、好きっ……」
「ん……」
短く頷いて、同じ気持ちだと、答えるように、広瀬が縛られた手のひらに、優しくキスを落とした。
「ふっ、あっ……!」
ビクビクッと身体が跳ねあがって、俺はどろりとした精液を、シーツの上にこぼした。
「はっ、はぁ、はぁ……」
同時に俺のナカに放たれた精液が、ぬるぬると穴のナカで動く感覚に、ぞくぞくしながら俺は、身体を捩って広瀬の方を向いた。
堪らない充足感に、溜め息しか出てこない。
「良かったの? 学」
「ん、ふっ……はぁ……」
「まだまだ、終わるには早いよ」
そう言って、広瀬がぐ、と肩を掴んでシーツに押し付ける。
「広瀬っ……まって、も……」
ずっとオモチャで弄られたせいで、敏感になった身体が、これ以上の快楽は辛いと訴える。
だが、広瀬は聞く耳を持つ様子が有るわけがなく、抵抗できない俺の両膝を大きく割り開いて、シーツに付くほどに開脚させられる。
「んっ、ちょっ……」
「柔らかいね。身体」
広瀬の笑みに、逃げられないことを覚って、俺は溜め息を付きながらも、広瀬の愛撫を待つように瞳を細めた。
誰も知らない二人の夜は、どうやらまだ終わらない。
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