3 / 4

第3話

 夕飯を済ませ、もう部屋でゆっくりするという広瀬の両親と別れて、俺と広瀬は宿の外にある露天風呂へとやってきた。穴場らしく、人もそれほど居ないとは聞いていたが、運が良かったのか、時間帯が良かったのか。丁度人が誰も居ないようだった。  岩場をそのまま生かしたような作りの、風情ある露天風呂は、外気が低いせいか煙がもうもうと立ち込めて、あたり一帯を白く包んでいる。 「やったね。貸し切りっ!!」  気持ち良く湯に飛び込み気味につかって、後からやってきた広瀬を振り返る。  広瀬は熱い湯が苦手なのか、ちょいちょいと足先で湯に触ると、ゆっくりと身体を湯に沈めた。 「あつー」 「気持ちイイじゃん」  広瀬の方へ寄りながら、俺は湯の心地良さに瞼を閉じた。  じんわりと身体がほぐれる様な湯の、熱さと染み入るような感じが、たまらない。風呂とは違う湯の柔らかさが、温泉なのだと実感した。  俺はチラリと、髪の先から滴を垂らす広瀬を見た。  一緒に風呂に入った事など、最近では割と多い広瀬ではあるが、こうして知らない場所で、夜の空の下見るのは、なかなか雰囲気が違っていい。魅力的な髪の向こうの広瀬の顔を、より一層引き立てる夜の気配に、妙な緊張感を生んだ。 「牧島くん、そんなに見られても困るんだけど」 「へ? あっ! ゴメン!」  じっと見つめていたことに気が付いて、赤面して背を向ける。  知らず知らずに、随分じーっとみていたらしい。  呆れた様子の広瀬に、恥ずかしくなってそっぽを向いて、お湯に顔まで浸かっていると、不意に背中に重みを感じて、俺はどきりとして肩を震わせた。  背中にぴたりと、肌が触れる。  背中から伝わる感覚に、ぞくぞくして、振り返り気味に見上げれば、首元に広瀬の髪が触れた。  する、と背後から回された手が、俺の胸と腹に回される。ぎゅ、と。背後から抱きしめられ、俺は心臓がバクバクして、真っ赤になって水を掻いた。 「ちょ、広瀬っ」 「暴れないでよ」  そんな事言われても。  温泉の熱さと、広瀬の行為に、のぼせあがってしまいそうになる。 「も、出るっ! 離せって!」  そう言って振り払おうとした矢先。  腕を掴まれて、背後に回される。 「いっ!?」  慌てる俺を他所に、広瀬が俺の首に歯を立てた。  がり、という音と、痺れるような痛み。 「ひろ、せっ……」  ぞくぞくする感覚に、膝からがくん、と力が抜けた。  乳白色の湯の中で、広瀬の手がする、と内腿を撫でた。俺はびくびくっ、と身体を震わせながら、広瀬を振り返る。  広瀬は相変わらず淡々とした様子で、つ、と内腿を撫でながら、奥の窄まりを暴こうと、指を忍ばせた。 「いっ、ちょ、広瀬っ!!」  叫ぶ俺に、広瀬が不愉快そうな顔をした。 「なに」 「どこだと思ってんだよっ!!?」  俺も一瞬流されそうになったが、ここは外で。公共の場所で。露天風呂だ。 「温泉」  素で返答され、思わず言葉に詰まっていると、先ほどまで下半身に伸びていた手が、前の方に回ってきて、胸の突起をつままれた。 「うっ!?」 「じゃあ、ここはどこ?」 「ばっ、かっ……!!」  先端を爪の先で引っ掻くように弄られ、俺の身体がビクンと跳ね上がった。 「い、あっ……ヤダ、って……」 「牧島くん、ここ気持ち良くなっちゃうんだ」  俺はそれには答えずに、震える指で広瀬の指を離そうとするが、邪魔される。  気持ちイイかと聞かれれば、イイのだが、それは、広瀬がするからだ。  広瀬の指先が、乳首を刺激する動きに、俺はくらっとして、首をかくんと落とした。  湯の熱さもあるかもしれない。暑さで頭がぼんやりして、意識が怪しくなる。 「ふぁ……広瀬っ……!!」 「足、開いて。こっち挿れるから」  その言葉に、俺は首を振る。 「いいから」  耳元で囁かれ、俺は唇を噛んだ。  広瀬の言葉に、身体が逆らえない。  こんな場所で。誰かが来たら嫌なのに。  星が。月が。雲が。空が見ているのが、気になって仕方がないのに。  俺はおずおずと足を開いて、広瀬の手がする、と足を撫でるのに、身体を震わせながらもいう事を聞くしかなかった。 「っ………」  広瀬の指が、つぷ、と穴をさぐる。身体の中を触れられる感覚に、ゾクゾクと震えながら、俺は肩に噛みつく広瀬の頭に手をやった。  温泉で湿った広瀬の髪は、しっとりと手になじんで、不思議と安心する。  広瀬の指が、ぐり、と内壁を抉った。 「う、あっ……!」  何度触れられても、慣れられない。拭えない違和感と、圧迫感。  でも、その先に快楽があるのは、すでに知っていて。  この違和感や、痛みが、広瀬とのつながりだと、強く感じてしまう自分もいて。 「ひろ、せ……」  にゅくにゅくと動く指の動きに、身体が震えるものの、広瀬に慣らされた身体は、この先にある快楽を求めて自然に受け入れてしまう。  広瀬の熱が。広瀬の指が。  俺に触れるだけで、身体中が歓喜する。  何度もそうしてナカを抉るように拡げる指に、耐えるようにしていると、広瀬が指をにゅる、と引き抜いた。その感覚に、思わず「んあ」と、変な声が出てしまい、赤面して振り返ろうとしたら、広瀬が腰を手で掴んだ。 「え、広瀬……」  広瀬が、穴に性器を押し当てる。広瀬の性器はもう昂っていて、先端をぐい、と押し付けるようにして入口付近を押し広げる。 「なに」 「ま、まって、本当にすんの!? だって、ここ!」 「するよ」  え、まって。  だって。  嫌だ。  広瀬が、ぐい、と腰を押し進める。  ぐぷ、と、穴を拡げながら、広瀬の性器が内部に侵入してきた。 「い、あっ……!!」  温泉のせいなのか、浮力が効いて、逃げようにも水を掻くだけで逃げられない。  ぐぬ、と貫いた性器が、根元まで入り込む感覚に、俺はビクンと身体をふるわせた。 「ひ、ああっ……!! あ、あ……!!」 「牧島くん、声、あんまり大きいとバレちゃうよ?」 「ばっ……ん、こんな、場所でっ……!!」 「大丈夫だよ。結構穴場らしいし」 「――――ヤダ、お湯、ナカ入るっ……!!」  涙目になって訴える俺に、広瀬は口元で笑うだけだった。  広瀬が、身体を揺さぶる。  その度に湯がちゃぷちゃぷと揺れて、変な感じがした。広瀬が出入りする穴からも、僅かに湯が入りこむ。 「ひろ、ひろっ、お湯っ、汚すっ!!」  涙と鼻水が出ながら訴える俺に、広瀬がお湯をぶっかけた。 「ぶふっ」 「すごい顔」 「おま、なっ……ん」  広瀬が、ぐい、と俺の腰を掴んだ。繋がったまま立たされて、奥を抉られ、思わず顔を顰める。 「いあっ」 「仕方がないなあ。ほら、その岩のとこ、手ついて」 「ん、あ」  言われるままに露天風呂の岩の部分にしがみつく。ごつごつした岩が若干痛いが、そんなのを気にする余裕はなかった。  広瀬はすぐさま、また俺の身体を激しく揺さぶて、ずぷずぷと穴の内部を擦り始める。  岩のせいで反響する露天風呂に、じゅぷっ、じゅぷっ、ぱん、ぱん、と、卑猥な音が響き渡った。  見られなくても、音だけで何をしているかなんてバレてしまうではないか。  そう思うが、理性が半分以上飛んでいた。 「い、いいっ、やっ、ひろ、んっ、んっ……!!!」 「牧島くん、イきそうなの? ねえ。それ、そのままイったら、お風呂汚しちゃうね」 「ん、んぁ、や、……まって。まて……」  広瀬が、俺の手を俺の性器に導いた。 「しっかり握って、イかないようにしないとね。汚したくないでしょ?」 「っ。う、うぅっ……んっ……」  言われるがままに自分の性器の根本を握り、精液が零れないよう、必死で押さえつける。  だが広瀬は、内部を刺激するのをやめるどころか、感じやすい部分を必要にグリグリと先端で攻め続けた。 「いっ、あ、あっ、ああぁ!!」  理性が吹き飛ぶ快感に、身もだえて泣き叫ぶ。  もどかしい排泄感が快感になり、突き上げられ内部を貫かれる刺激が、苦しい程の快感を生む。 「ひ、ぃあ、っ、かず、和己、ダメ、もっ……!!」 「苦しそうだね、学っ……」 「う、んっ、くる、しっ」 「出しちゃえば?」  広瀬の言葉に、俺は首を振った。  イきたい。イってしまいたい。  でも、出来ない。  ギチギチに張り詰めた性器をぎゅうぎゅうと握り、その痛みがマヒして、それすら気持ちイイ気がしてしまう。 「そう? じゃあ、僕はイくよ」 「かず、汚し、ちゃ……!!」 「ん、分かってる。学のナカに全部出すね」  普段なら冗談じゃないと言いたいが、今回ばかりは広瀬の言葉に頷いて、俺は腹のナカで弾ける精液を受け止めて、その感覚にびくびくと身体を震わせた。  ナカに放たれた精液の熱さと、ぬるぬるした感覚は、酷く違和感があって、己のナカに広瀬が刻み込んだのだと、強く実感する。  ずるっと性器を引き抜いて、広瀬が穴に指を当てた。 「このままじゃ出てきちゃうね」  そう言いながら、手元に置いてあった手拭いの下から、何やらアヤシイ物体を取り出す。  ピンクの、所々に変に凹凸のある、棒状のものに、俺はビクンと身体を震わせた。 「ひ、ろせ?」  先程まで血がのぼっていた頭が、急に冷静になる。  うそ。  やだ。 「しっかり、栓してあげるね」  そう言いながら、広瀬は奇妙な形の棒を、俺の穴に捩じ込んだ。  ぐちゅ、ぐぬっと、うねりながら、ナカを抉りながら、それが身体の中に入ってくる。  節の部分が引っ掛かって、内部を妙に刺激し、さらに言うなら、ちょっとぐらい力を入れても、抜けそうにない。 「い、ひぁっ、や、だっ……!」 「もう少し奥、挿れるね」  ごり、と刺激された感触に、脳が痺れるような感覚が身体中を駆け抜ける。 「い、ひぁっ、う、うぅっ……!!」  ビクッ、ビクビクッ、と、身体が痙攣した。  イきたくないのに、身体は言うことを聞かない。  根本を押さえているせいで、酷く苦しい快感が脳を支配するように思考をかき混ぜて、俺はゴツゴツした岩に身体を擦り付けて身体を震わせた。 「あ、あぁ……あ、あ……」  岩が皮膚を裂いて、僅かな裂傷を作っても、快感が身体を抜けきらなかった。  泣きたくないのに、涙が勝手に溢れて、唾液と混ざる。  その俺の顔に、広瀬は満足気に微笑んで、俺の頬を舐めた。 「酷い顔」 「ぐっ、うぅ……」  呻く俺を広瀬の方に向かせて、広瀬が俺の身体を撫でた。  びくびく震えながらも、されるままになっている俺の、掴んだままの性器を掴んで、広瀬が囁く。 「イきたいでしょ」  俺は頷きながらも、汚す、と、うわごとのように繰り返す。  その様子に、広瀬が身を屈めて、脚の間に顔を近づける。 「ひろ、せっ……!」 「牧島くん、下の口で飲んでくれたからね。僕も飲んであげる」  言いながら、先端を口に含む。  生暖かく、ぬるりとした感触に、意識がそちらに集中してしまう。 「あっ、あっ……ダメ……で、るっ」 「出してイイよ。全部、飲んであげる」 「っ、っつ!!」  広瀬がそう言いながら口の奥に性器をくわえこみ、根本を押さえていた指を、ゆっくりと放した。  ビクビクッ、と、魚のように身体を跳ねらせて、俺の性器から精液が噴き出す。  びゅく、びゅくっ、と、勢いよく吐き出された精液が、僅かに広瀬の口の端から溢れて、顎に白く濡らして行った。 「あっ、あ、あああぁぁ……っ」  全部飲み込んだのか、広瀬が喉を動かす。  涼しい顔して、眉一つ動かさない広瀬に、俺は解放の余韻を息を切らせて見つめた。 「……っ、はぁ、広瀬……」 「ん」  じっと見ていたら、広瀬が俺の唇にキスをする。僅かに、精液の味がして、何となく背徳的な気分になる。 「広瀬、これっ……」  唇をぷは、と離して、俺は広瀬に、突っ込まれたままの棒状の玩具に視線をやった。 「ここじゃマズイでしょ。ここ、シャワー無いから、宿まで帰ろうね」 「ふ、へ?」  広瀬の言葉に、その意味を反芻する。  確かに、ここは洗い場はない。かけ湯は出来るが、露天だし、その辺に流すのは気が引ける。  けど。 「う、そ、だろ……?」 「嘘なんかついてどうするの」 「ーーーーーー」  思わず涙目になる俺に、広瀬は無情にも俺の腕をぐ、と掴んで風呂から立たせる。  半ば無理矢理脱衣所に連れてこられ、身体を拭くのもそこそこに、浴衣を着せられた。 「こっちも、着けてあげるね」 「へっ? な、にっ?」  そう言って広瀬は脱衣籠から小さな輪っかのようなものを取り出すと、俺の乳首にそれを着け、きゅう、と縛るように締め付けた。 「いっ、なっ、何っ!?」  慌てる俺に、広瀬はカチ、と何かスイッチのようなものをオンにする。  乳首に取り付けられたそれがぶるぶる震えて、俺の乳首を刺激した。 「い、あっ! ちょっ……!」 「こっちもね」  広瀬はもう片方の乳首にも、その玩具を取り付ける。  ビクビクッと身体を震わせ、思わずナカを締め付けてしまったらしく、微妙な突起が内部をごり、と刺激して、俺は一瞬頭が真っ白になった。 「かず、みぃ……これ、や、だっ……とってっ!」 「大丈夫。宿で外してあげるよ」 「お、お願いっ……!」 「学はイイコだから、ちゃんと出来るって解ってるよ。ね」  そう言って髪を撫でられ、俺は思わず頷く。 「ん……っ、うん……」  広瀬は満足そうに微笑むと、俺の浴衣をきちんと直して、自分も浴衣を羽織ったのだった。

ともだちにシェアしよう!