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第4話

信を殴りに行くのかもしれない。 教師のところか警察かもしれないし、昔から付き合いのある昴流の両親に電話をかけるつもりなのかもわからない。 いずれにせよこのまま行かせてはまずいと慌てた昴流は、鏑矢の腕をとって弁解した。 自分がつい漏らした一言のせいで信が牢屋に入れられでもしたら、寝覚めが悪すぎる。 「違えから、言葉のあやだ言葉のあや」 「……あいつを生徒会室に連れ込んだそうだな。いままでのお前を鑑みれば、抱く目的で連れて行ったんだろうが」 「箝口令でも敷いとくんだったぜ……」 「だけど、逆に襲われたなんて話じゃないか、──さすがにそれはないと思ってたんだが……まさか本当だったのか?」 切実に尋ねてくる鏑矢に、ぐっ、と昴流は言葉を詰まらせた。 正直にメロメロゾッコン・ずっこんばっこん掘られましたと白状するのはどうしても気が引ける。 しかし、こんなに自分を心配する彼には適当なことを言って誤魔化すなどできない。 ジレンマである。 「昴流、答えろよ」 見栄、プライド、自分の築き上げたバリタチキャラ、掘られまくって正直愉しかったこと、信を好きだと指摘された動揺など、色々が渦巻き。 昴流が出した結論は。 「は、俺の口からは言えねぇな……真相を知りたかったら、信──その転入生に直接訊いてみな」 信に全部押しつける、だった。 ◇◇◇

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