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第4話
違う、とぼそりとつぶやいて否定の方向に首を小さく振ると、乱れた服まで勝手に正してくれていた信が口許を緩めて、言った。
「なら、仕切り直さないとな。一回振り返ってみろよ、自分のこと。
──そして考えろ。
本当に今のままのやり方で会長やってていいのか。何が足りなくて俺に負かされたのか」
穏やかな口調だったが、男の言葉には全く淀みがなく、空気を突き進んでこちらに真っ直ぐ届く。そのせいで、心の奥深いところまでずしりと響いてきた。
なぜ俺は途中で折れて、こいつを受け入れてしまったのか。
「持ち直したお前がもっといい男になってたら、いつでも相手してやるよ。それ楽しみにして頑張れ」
そう言って、信は俺の髪についた何やらを拭き取るついでに、好き放題髪を掻き回した。
“なんでお前に説教されないとなんねぇんだよ”
“何が楽しみにしてろだしねぇよ”
という反論は、ちゅっと軽く合わせられた唇によって塞がれた。
掠め取るように持っていかれて呆気にとられていると、片付けが終わったらしい信は一声かけてから、さっさと去って行った。
一人になった生徒会室には、押し潰されそうなほどに圧倒的な静寂が降り注ぐ。
その中で、教室に向かう気も起こらず、ただ俺は床に寝転んでいた。
一時間ほどの怒濤のやりとりのおかげで、憑き物が落ちたような感覚になって空っぽになった俺に、信に言われたことと……
あの男の纏わりつくような熱だけが残っている。
「………あの野郎……次は絶対、ヤってやる」
赤面するでも顔面蒼白になるでもなく、ただ俺は間抜けな顔のまま口に手の平を当て、呟いた。
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