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同姓同名の彼との出会い

「このクラスに、『ひろせまひろ』がいるって聞いたんだけど」 昼休みを知らせるチャイムが鳴ると同時に、ガラッと扉が開いて、どかどかと5人組の男子生徒が入ってきた。 真ん中のポジションにいる生徒と、詰襟の赤バッチを見て、一同騒然となった。 女子は全員、黄色い悲鳴を上げ、目をきらきらと輝かせ、僕の方に一斉に視線を向けてきたんだと思う。 ごめん、心、ここにあらずで。 今、僕は、有馬さんとの初めてのデートの事で頭がいっぱいだった。 だからこれだけ、クラス中が大騒ぎになっているにも関わらず、まさか、自分の事を言われているなど露知らず。僕は、机に頬杖をつき、ぼんやりと窓の外の景色を眺めていた。 「・・・・真尋・・・・おい、真尋!!」 隣の席の林くんに、肩を強く揺す振られてようやく我に返った。 「何!?どうしたの?」 「どうしたの・・・じゃねぇよ。3年の、ほら、真尋と同姓同名の、前の生徒会長が真尋に会いに来てんだよ」 「ごめん、人見知りが激しくて、顔あんまり覚えてない。それに、名前も」 「はぁ!?」 林くん、呆れてとても大きい溜息を吐いていた。 「お前が、もう一人の俺か」 声を掛けられ、見上げると、すらりとした長身の同姓同名の先輩がむすっとした表情で突っ立っていた。有馬さんと同じくらいの背の高さかも。 精悍な顔つきは、有馬さんみたく、男らしくて、かっこいい。 でも、有馬さんとは雲泥の差。 彼の方が、100パーカッコいいし‼ そっちが、むすっとしてるなら、僕も。 いくら、年上とはいえ、初めて会うのに、その態度は幾らなんでも失礼だと思う。 くすっと、形の整った口角が緩んだように見えた。 「お前、なかなか面白いな。よし、気に入った‼ちょっと、付き合え‼」 先輩に、手首をガバッと鷲掴まれて、椅子から引きずり出されると、そのまま、ズルズルと引っ張られ、どっかに向かって歩き出した。 声を上げようとしたけど、じろりと、他の四人の先輩たちに睨まれ、声さえ出せなかった。 廊下に溢れる生徒達の波を掻き分け、好奇の目に晒されながら、先輩方に有無をいわさず連れていかれた。

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