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遥と叶多
「かなた、かなた」
それこそ幼稚園の頃からだった。
俺が泣いていると、必ず遥 は来てくれた。
俺は幼い頃から鈍くさくって体も小さかったから、よくイジメのターゲットにされていた。
その時いつも助けてくれたのが、兄弟の遥。数分だけ早く生まれた、俺の双子の兄。
「かなた、だいじょぶか?」
泣きじゃくる俺の顔を覗き込んでくる、小さな顔。その心配そうな目に、『だいじょうぶ』って笑いかけて安心させたいのに頬を流れる涙は止まらない。
「かなた、なくな。おまじない、してやるから」
そう言うと、遥は俺の口に、自分のそれをゆっくりと近づけた。
俺は僅か五歳そこそこで実の兄とキスをかますという、とんでもない過ちを仕出かした。
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