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遥と叶多
時は流れに流れて約十年後。俺たちは高校一年生になった。
「ハル、おはよ~」
朝、遥と一緒に校門を潜ると早速四方八方から声が飛んでくる。『ハル』は兄貴の愛称だ。
…だからコイツと登校するのは嫌なんだ。あっという間に俺の隣に人だかりが出来る。芸能人かよ。
「っと、ワリ!…えーと…何だっけ?名前」
「ばーか、叶多 だよ。俺の弟くらい覚えろばーか」
俺とぶつかった取りまきの男子生徒の問いに答えようとした言葉は、遥に先を越された。トロいって言われてるようで気に食わない。
「二回もばか言うな」とじゃれている集団を置いて、「先行く」と俺はボソッと呟いた。そして昇降口へと歩き出す俺の背に、「なにあれ暗~い」と女子の一人の甲高い声が投げられる。
うるさい。何も知らないくせに。
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