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『兄』

「遥!!」 乱暴にドアを開け、俺は自分でも驚くほどのデカイ声で怒鳴り室内に乗り込んだ。兄貴の部屋に入るのは数年振りだったけど躊躇も何も無かった。 整頓されたそこの床に座っていた遥は「あらら」と間の抜けた声を上げる。それに俺の怒りは増大した。「何でもないよ、じゃーね」と通話を切り立ち上がる遥を睨み付ける。 「どういう事だよ今の…説明しろ!」 「うわあ、叶多ってばコワーイ」 「茶化すな!!」 憤る俺に遥は「ノリわっる、もー分かったんじゃないの?」と、小バカにしたように片眉を上げる。 「サクをハメたんだよ。モモは俺の協力者。ちなみに彼女、俺に惚れてマス」 正面切って堂々と悪事をぶちまける遥に俺は拳を強く握った。キレすぎて酸素が上手く出来ず過呼吸みたいになり、肩で息をする。 誰かに対してここまで怒るのは初めてだった。腹の奥から赤黒い波が渦巻いてくる。ガッと遥の襟元に掴みかかった。 「サクに謝れ!!どうしてそんな酷い事したんだよ!友達だろ!!」 サクは彼女が本当に、本当に大好きなのに。一筋の野球と同じくらい、いやそれ以上に。今も、今この瞬間だって彼女のプレゼントで悩んでいるのに。 俺の訴えを、でも遥は平然として聞く。

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