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『兄』

「でもモモの奴サクがタイプじゃないってゴネやがってさぁ、ヤリマンのくせにウゼェったら。一週間ヤってあげて、ようやく引き受けてくれたよ。もーその間の気分サイアク。何であんなクソ女抱かなきゃなんねえんだよ。叶多撫で回してないとやってらんなかったよマジ」 体が震え始める。怒りでか恐怖でかは分からない。 ガタガタする俺に遥は「どうしたの?寒い?」とズレた事を訊く。 「しっかし間一髪だったよね!サクをオトしたってモモから連絡きた直後に叶多の甘酸っぱい恋バナじゃん?ミラクルすぎて俺ちょっと冷や汗モンだったよ~!ま、叶多の恥ずかしいカオたくさん見れたからイイけどぉ」 ――そん、な… そうだ…サクは、草野球観戦の日にコクられたって言った。俺と別れた帰り道に。 そんで、家に帰ったら遥が居て、しばらく不機嫌だったくせに上機嫌になってて… あ、どうしよう…辻褄が、合った。合ってしまった。 「あの日、早く叶多に会いたかったのに帰り遅かったよねぇ。何してたの?」 ――あの日…?あの日の、帰りは…… 公園で、お前のこと考えてたんだよ。遥。

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