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第27話 無力
『もう会いたくない』
海音からそう告げられ病室を後にすると、廊下のベンチに陸也が座っていた
俺に気が付いて顔を上げた陸也の目は赤く腫れていて、あの後もずっと泣いていたのかと思うと何も力になれなかった自分が本当に嫌になる
「ごめん…説得出来なかった」
「…そ…っか…」
そう言ってふらりと歩き始めた陸也
覚束ない足取りが心配で思わず肩を抱いた
「陸也…帰るなら送ってく」
「…うん」
昨日とは打って変わって素直に俺の提案を受け入れてくれた陸也
車に乗った後、陸也はまた静かに泣き始めて俺も泣きそうになってしまった
「…陸也」
震える肩を抱き寄せながら、自分に出来る事は何か必死で考えを巡らせたが、結局陸也の家に着くまでにその答えが見つかる事は無かった
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