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第26話 真実 Ⅲ

陸也と別れ、海音の病室のドアをノックした 「どうぞ」という海音の声を聞いた俺は、ゆっくりとそのドアを開けた 「永遠 また来てくれたんだ、嬉しいな」 先程の陸也より 一回り小さく感じる海音 儚く笑うその笑顔に 俺は自分が感じた疑問を素直に口にしていた 「…どうして 手術受けないんだ⁇…陸也 泣いてたよ⁇」 俺の言葉に目を丸くした海音は フッと小さく笑った 「陸也はね…僕のドナーベビーなんだ」 「ど⁇ ドナーベビー⁇」 聞き慣れない単語を繰り返して尋ねると 海音は小さく頷いた 「僕と同じDNAを持った受精卵を選んで産まれて来た子だよ  医者をやってる叔父が母に何度も泣きながら土下座されて、日本では禁止されているこの行為を行なってしまったらしい  そのせいで…陸也は健康な体に何回もメスを入れられて、他にも痛い思いや我慢を沢山させてしまっている…もう嫌なんだ」 「でも…陸也は海音が手術を受ける事を望んでいるのに」 「うん…でもね、僕はもう 自分は良くならないって分かってるから」 「そんな事」 「それにね」 俺の言葉に被せるように海音が言葉を紡いでいく 「今回の手術を受けたら 陸也は今後運動にも制限がかかっちゃう…  そしたら、将来好きな人との子供を産む時にも影響が出るかもしれない…  だからこれ以上 陸也の人生の邪魔をしたくないんだ」 「…海音」 「僕はまだ未成年だから 陸也が良いって言っちゃうと 親が同意書にサインする…  だから陸也に 今回の手術には同意しないようにお願いしているんだ」 ここまで聞いて、昨日 陸也が俺を縋る様な目で見ていた理由がやっと分かった 陸也が抱えていた思いも 海音の決心も どちらの気持ちも他人の俺でさえ苦しくて、次の言葉が出て来なかった 「でも母さんから責め立てられて、結局可哀想な事をさせている…本当駄目な兄だよ…僕は」 「…そんな陸也の思いを 汲んであげる事はしないのか⁇」 「…もう陸也の人生を縛りたくないんだ」 「でも」 「僕は!!」 海音が声を荒げた所を初めて聞いた俺は か弱い声量であるにも関わらず、驚いて言葉に詰まってしまった 「僕だって!! 一回くらいは 陸也のお兄ちゃんらしい事がしたいんだ!!」 そう叫んだ後 海音は激しく咳き込んだ その苦しそうな様子にナースコールを押そうとしたら、海音にその手を取られてしまった 「…大丈夫だから」 そう言った海音は 俺が退院した時と同じ顔で笑った 「永遠…もう来ないで」   「え⁇」 「君と友達になれて…本日に嬉しかったし、楽しかった  でもね 君といると、もう少し生きたいってそんな気持ちが湧いてしまう時があるから…  だから…もう会いたくない」 海音の綺麗な目は強い決意で満ちていて、情けない俺は この後 結局何も言えなかった

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