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(番外編)オメガとアルファのときー1
「はぁ……はぁ……」
息苦しそうに胸元を押さえながら、レイは人通りの少ない道を歩いている。顔が赤く火照っており、立っているのも辛そうであった。
目の前まで城が迫っている。あと少し、その気力だけで歩いていた。
このまま誰にも見られずに部屋に戻りたい。レイはただそれだけを願っていた。しかし、それを叶えることは不可能であるということも頭の中にはあった。
レイの住んでいる場所は、国王であるアルバートの私室である。彼の部屋のある城は、厳重な警備が成されている。そのため、ありとあらゆる門に警備が配置されている。
確実に門番に会うということが、今のレイにとって大きな問題点であった。
いくら番であるアルバートのみに発情の影響があったとしても、レイは今の自身の姿を誰にも見られたくないと思っていた。
それは、自身が他者を誘惑する悪魔という存在でもあることに起因していた。発情期は無意識的に他者を誘惑してしまう状態が強くなり、襲われることもあった。
本来であれば部屋に籠もっていればいいのであるが、必ずしもそれができるとは限らなかった。今日のように、どうしても出掛けなければならない日も存在していた。
今日も無事に部屋に戻りたい。そう思いながらも歩き続け、とうとう城の門が目前に現れた。
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